一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら

2016年11月13日

ムエタイの勝敗は試合前にオッズで決まってしまう? 一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その26

 読者の皆さんからいただく質問の中にときどき「ムエタイの勝敗は試合前の予想で決まるというのは本当ですか?」というものがあります。

 ムエタイにはギャンブルという側面がありますが、スポーツにお金を賭けるということは日本では馴染みがないので、どうも神秘というか、不思議なイメージがあるようで、こういう質問につながってしまうのかな、と思います。

corner でも、世界中で行われているほとんどのスポーツは、賭けの対象になっています。海外のビッグマッチの記事で「パッキャオの掛け率は○倍」とか「マンチェスターユナイテッドの掛け率は○倍」などというのは誰でも読んだことがあるでしょう。ムエタイだけが賭けの対象になっているわけではないのです。

 で、オッズ(掛け率)というものは、試合の勝敗予想そのもので、勝ちそうな選手には低い掛け率、負けそうな選手には高い掛け率がつくのです。

 つまり、勝ちそうな選手が勝った場合は少ししか払い戻さないよ、負けそうな選手が勝った場合は沢山払い戻すよ、という意味で、だからこそ、負けそうな選手にも高い払い戻しを目当てに賭ける人がいるわけです。

 これがもしも、事前の勝敗予想の通りに結果が出るのなら、負けそうな選手に賭ける人はいないでしょう。そうなるとギャンブルは成立しません。ですから、予想によって勝ち負けが決まるということはありません

 試合の多くは事前の予想の通りの結果になります。しかしこれは、予想が当たっただけの話。予想に合わせて勝ち負けが作られるわけではありません。

 もちろん、ムエタイの試合で勝ち予想がついている選手には、たくさん賭けている人がいるわけで、その分、会場の応援も盛り上がり、ジャッジの採点が甘くなる可能性はあるでしょう。でも、それだって、その選手が全然ダメなら勝ちになるようなことはありません。

 会場人気がある方が接戦で有利になる傾向は判定のあるスポーツではよく見られることで、ムエタイだから、ギャンブルスポーツだからと思うのは見当違いでしょう。

 ギャンブルスポーツというと、何かインチキっぽいイメージがあるかもしれませんが、実はほかのスポーツよりもインチキや不正は少ないのです。

 一度インチキと疑われると賭ける人がいなくなってしまうのがギャンブルスポーツ。ですから、日本の競輪や競馬もそうですが、ムエタイもインチキには非常に厳しい処分がおこなわれます。

 反対に、賭けの対象になっていない日本のボクシングを見ればよくわかりますが、そこでは、あからさまなカマセや、最初から結果のわかるカード、不合理な判定などが山のようにあっても、誰も処罰されないのです。

 ムエタイはギャンブルだからこそ不正が少なく、真剣勝負であるのです。ダマされる心配無しに安心して見られる格闘競技スポーツ。それがムエタイだと思います。

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2016年06月10日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その25 世界王座返上を簡単に言う女子ボクシングの非常識 防衛するつもりの無い世界王座へ挑戦するのは無しの方向で

koseki この写真の人物はJBCさんお気に入りの世界チャンピオン小関桃選手(青木ジム)です。撮影時期は今年の3月。

 昨年の10月22日のWBA/WBC女子世界アトム級王座統一戦に勝利して2本のベルトを持っているはずなのに、この日、彼女はWBC1本しか持たないで後楽園ホールにあいさつに来たのです。

 このときにイヤな予感はしましたが、やはり小関選手はWBAの王座を返上したそうです。一度の防衛戦もしないで。

 世界王座を防衛しないで捨てるなんて、常識的に有り得ないことです・・・。

 防衛する気がないなら、どうして統一戦をしたんでしょう?宮尾選手と戦いたいだけなら最初からWBCだけをかければ良かったじゃないですか。統一戦じゃ無しで。

 トップボクサーが命がけで奪い合うチャンピオンベルトはおもちゃではありません。取ったからもういいや、ってわけにはいかないんですよ。

 二つの団体に認定料を払う金銭的な余裕がないのかもしれませんが、そんなことは試合前からわかってたじゃないですか。いまさらお金が無いから返上なんて通りません。

 特に統一戦は、勝った王者に両団体のその階級の価値を高める義務があるんです。王者がこの階級を盛り上げてくれることを期待して認可された統一戦なんですから。片方だけイラナイなんて、その団体の価値を否定するのと同じ。失礼な話ですよ。

 両方とも返上するならわかります。が、片方だけ返上するのはそのベルトをディスってるってことです。

 WBAのこの階級はこれからどうすればいいんですか?この階級のベルトは小関選手が捨てたベルトになったんです。そんなベルトを次に巻く人は立場ないですね。

 性転換手術を受けるとかの真道ゴー選手も、藤岡選手に勝ってWBO王者になったら返上する予定だそうですが、ボクシング好きなら世界王座返上なんて、とても出て来ない言葉だと思います。

 なんで女子ボクシングって王者の自覚が無い人が多いんですかね?もともとボクシング好きではないんでしょうか?ほかにやることなくてやってるだけですか?迷惑なんですけど、そういうの。自分探しとかならほかでやってください。こっちはプロの試合が見たいんで。

 今後は、防衛戦無しの身勝手な返上は剥奪扱いにするべきだと思います。

 返上前提ならタイトルマッチしないでください。気軽に返上されるベルトに価値なんて生まれるはずがありませんので。

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2016年05月27日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その24 どうしてボクシングや格闘技の選手は身近な相手にばかり礼を言うのか? あるいは謝罪するのか?

 「ファンのみなさんありがとう!」「この勝利はサポーターみんなのおかげです!」Jリーグの勝利者インタビューでよく聞くことばです。これはサッカーでは当たり前で、言わない選手はほとんどいません。

 それにくらべて、後楽園ホールのボクシングや格闘技の選手はマイクを向けられて感謝の言葉を口にするときでも「ありがとうございます」とは言っても「ファンのみなさん、ありがとう」とハッキリ言葉にするひとはあまりいないですね。

 ご存知のとおり、後楽園ホールの客席は1700程度。これに比べてサッカー会場のキャパは何万もあります。

 その何万席がお客さんで埋まれば黒字ですが、逆に空席だったら大赤字。自分のチームが赤字だったら、来季の報酬の交渉もかなり困難になるでしょう。いい年俸がもらえないとそれはそのまま自分の選手生活に直撃です。

 だから、サッカー選手はお客さんのことはいつも気にしています。入場料収入のことや、スポンサー収入の仕組みも知っているので、そういう気持ちが言葉に出ます。

 でも、ボクサーや格闘技選手の多くはそれで生活をしているわけではありません。だから、あまり大会の運営面のことには意識が行きません。

 そんなわけで、やっとタイトルを取ったばかりの格闘技選手のあいさつはこんな感じです。「おかげさまでここまで来れました。丈夫に育ててくれた両親に感謝します。応援に来てくれた職場のみんなありがとう!」そして選手やジムから直接チケットを買ってくれた応援団に一礼して退場。

 その後、タイトルを何度か防衛するころには、大会運営のためにジムの会長さんがいろいろおカネに苦労してるとか、後援会や地元の事業者のひとがおカネを出してくれているとか、そういうことが見えてくるのであいさつも「ジムの会長、後援会のみなさん、いつもお世話になってる(スポンサーの)◯◯さん、本当にありがとうございます。そして、応援のみんなありがとう!」という感じになっていきます。でも、依然として一般のファンへの感謝は見られないのが普通。

 ほとんどが身近な人へのお礼ですが、そのことばはどうしてもリングの上で言わなければならないものでしょうか?

 両親や、応援団や、会長や、後援会や、スポンサーさんには、あとでいくらでもお礼を言えるじゃないですか。直接、相手の顔を見ながら。

 しかし、一般のお客さんはいましかそこにいないのです。だから、実際に応援してくれたかどうかは別にして、とにかく試合を見てくれた客席のみなさんにお礼を言うのが本当は一番の優先事項です。

 きっちりお客さんにお礼を言えば、次からも応援してくれるかもしれませんし、帰りにツイッターで「いい試合だった」とつぶやいてくれるかもしれません。

 ファンを増やす一番のチャンスは試合直後なのです

 もう一度書きますよ。ファンを増やす一番のチャンスは試合直後なのです

 プロはその機会にファンを増やさなかったら次のステップに行けません。「ファンのみなさんありがとう!」これを言わないでスターになったひとはいません。試合を見てもらえるのはありがたいことなんです。

 だって、次のステップはもっとおカネがいるのです。だから、もっと大きなスポンサーさんを見つけなくてはなりません。そして、大きなスポンサーさんは、自社のイメージを高めるために選手の人気や好感度がほしいのです。

 もう一度書きます。大手のスポンサーさんは選手の人気や好感度がほしいのです。

 数年まえ、某ジムにはとてもいいスポンサーさんがいました。ドカッと資金を出してくれるので、会場を押さえたり、豪華なパンフを作ったり、スポーツ専門チャンネルの枠を買ったり、ほかのジムがうらやむようなことがいろいろ出来ました。

 あるとき、会場にスポンサーさんがやって来て、来賓あいさつのためにリングにのぼったとたん、その表情がくもりました。目の前で、お客さんが帰っていくのです。

 まだこれからメインが始まるというのに、さらにお客さんは帰り続け、会場のガラガラはどんどんひどくなり、スポンサーさんの表情はさらにこわばっていきました。

 そして、この大会のあと、スポンサーさんはジムを離れました。

 大きなスポンサーさんは、趣味や道楽や会長との友情でおカネを出してくれるのではなく、自社のブランド力アップにスポーツ選手のイメージが有効だと判断しておカネを出しているのです。

 だから、目の前でぞろぞろと100人、200人のお客さんが帰ったら、スポンサーさんは撤退を考えるわけです。人気のないジムにおカネを出してもなんにもなりませんから。

 お客さんひとりひとりの出すお金は数千円からせいぜい1万円、2万円。

 ホール規模の会場なら、チケットの売り上げを全部あわせてもスポンサーさんたちの出すおカネより少ないかもしれません。

 でも、そのひとりひとりのお客さんを大事にしないと大きなスポンサーさんはいなくなっちゃうんです。もちろん、テレビや雑誌の取材も来ません。人気のない、知名度の低い選手に力を貸してもなんにもならないからです。

 いい試合をして勝ったなら、ハッキリとお客さんに好感を与えてファンになってもらうところまでがプロの仕事。

 スターと呼ばれる選手は、2階席や、3階席や、一番遠くのお客さんにまでしっかり顔を向けて手を振ります。お客さんの歓声がスポンサーを呼び、さらに大きなチャンスにつながることを彼らはわかっているからです。

 身内はもともと味方なんですから、お礼は後回しでいいんじゃないでしょうか?

高野_人母美

 こんな記事を書いている途中に、高野人母美選手が自身の非常識な言動により謝罪しなければならない立場に置かれるという事案が発生しました。

 例によって当ブログはウラの事実関係は関知しませんが、オモテの経緯だけを見ればあまりにも会長さんに対して礼を欠いた行動でしたので、会長さんへの謝罪は当然だと思います。

 でも、一般のファンへのことばも同じぐらいに大事だということを忘れないでもらいたいと思います。

 高野人母美選手はいまのボクシング界ではたぶんナンバーワンのCM出演数を持っているでしょう。

 それは高野選手にとても大きな好感度があるからです。

 その好感度を保つために一般の人々に向って「ファンのみなさん、すみませんでした」と頭を下げる必要があるのです。今回のことは単に会長と選手の問題ではないのです。

 実際にチケットを買ってくれる人は数百人かも知れませんが、それは氷山の水面上の一部であって、全国には潜在的ファンがいたるところにいるのです(ホールの数百人だけがファンならば、ボクシングや格闘技を伝えるメディアは存在しないでしょう)。そのひとたちのことを忘れてはプロはお仕事が出来ません。顔の見えない多くの潜在的なファンこそ、人気選手だけが持つ宝なのです。だからそのひとたちのことを大事にしましょう。

 人気商売ってそういうものでしょう。

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2016年05月08日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その23 打撃系選手がMMAにいくときに問題になること または土台からの再構築の話

 キックで有名なあのひとが今度MMAに行くらしい、とか、ムエタイチャンプのあの選手もどうやらMMAに参戦するらしい、とか、依然としてそんなウワサがたくさん流れる今日この頃、打撃系ファンのみなさま、いかがお過ごしでしょうか。

 今回は、打撃系選手がMMAにいくときに、問題になることについて書きたいと思います。

 と言っても、むかしからのお決まりの「寝技対策」とか、そういうことではありません。技術論は当ブログでは無理ですし(笑)、こんなところでそんなことを読みたい人もいないでしょう。

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 ひとくちで言えば、MMAにいくときの一番の問題は「打撃の選手は引く力が弱い」ということです。

 打撃に使う力は「押す力」。手や脚を前やうしろに押し出すことが、突きや蹴りという運動です。回し蹴りも、バックブローも円周上に脚や手を押し出す運動です。ですから、打撃系選手は普段のトレーニングで主に押す力を身につけています

 これに対し、組み技はほとんどが「引く力」です。相手と組んで逃げられないようにロックしたり、スリーパーで首を絞めたり、相手の腕を伸ばして十字を決めたりする動きは引く運動です。

 MMAではこの両方のパワーが必要なのですが、打撃系選手の多くはこの引く力がビックリするくらい弱い人が多いのです。

 それは一つには体重制限のせいです。しぼって打撃に必要な筋肉以外の一切の無駄を削ぎ落とした肉体が、打撃系選手のあのボディ。ですから、打撃に不必要な「引く筋肉」はあまりありません。

 また、押す力と引く力はまったく反対方向の筋肉が担当しているので、打つ力=押す力を最大限に発揮するためには反対方向の筋肉がじゃまになります。ですから、すぐれた打撃系選手ほど引く力が弱いという傾向があるようです。

 ということで、打撃のひとがMMAに行く場合は、いままでは故意に無視していた別系統の筋肉を身に付け、その使い方を学ぶことから始めなくてはなりません。

 パンチとキックは出来るからあとは組みを覚えるだけ、という簡単な話ではないんですね。

 ある打撃系選手が新しいトレーニングで新しい筋肉を身につけ、MMAの準備をしたとします。その場合、もうそのひとの体は打撃専門だった時とは違うバランスになっています。

 新しく「引く筋肉」をつけて体重を増やした場合は、当然もとの階級よりも重くなっていますし、体重を維持しながら「引く筋肉」を付けたのなら、その分「押す筋肉」は減っていることになります。どちらにしても、以前の体ではありません。

 ですから、MMAにいくときは、ある意味、もう打撃系には戻らないぐらいの覚悟が必要だといわれています。

 だれかがMMAに進出するというニュースを聞いたら、そういう覚悟をしているんだな、と思ってください。少なくとも「新しい技を覚えればいい」みたいな気楽なことではないってことです。

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2016年05月05日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その22 外国との対戦を冷静に見ることは難しい 戦いのプロの軍人でも冷静な分析は出来ない

 お気に入りの選手が戦っている試合はドキドキして非常に興奮しますね。なかなか冷静には見られませんが、一般のファンにとって、冷静に見られなくても好きな選手が勝てばなんでもいい、というのは一つの真実です(笑)。

 しかし、善戦虚しく勝利が訪れなかった場合・・・結果がKOなどの明白なものなら納得するしかありませんが、微妙な判定で負けたりすると「え?そんなポイントなの?」「こっちの攻撃が過小評価じゃない?」と不満に思うことも多いです。

 お客さんは娯楽としてお金を払って見ているわけで「なんだよ、ヤオ判定かよ」と文句のひとつも言って終わりにしてもいいのですが、本当にその選手の次戦や、あとに続く選手のことを考える場合は、客観的な試合の分析はやっぱり必要でしょう。

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 試合の採点を意識しながら見るときの基本はどちらかの選手ばかりを見ないで、視点を両者の中間に置き、パンチやキックそのものを見るのが正しいとされています。

 これは知らない選手の動画などを見ながら練習すると何回かやるうちに誰でも身に付きます。そうなるとパンチやキックの命中率などを冷静に見ることが出来、だんだんポイントの判定も読めるようになります。

 しかし、それでもやっぱり、日本人選手と外国人選手が戦っている場合などは、どうしても冷静さを無くして日本側をひいきしてしまいますね。

 野球やサッカーの国際戦でもかなりの熱狂が生まれますが、格闘技の場合は直接的に相手と打ったり蹴ったりという種目ですから、さらに思い入れは大きくなり、冷静に見ることはとても困難になるんです。

 格闘技よりもさらにドギツイ話ですが、戦争で自軍が勝っているのか負けているのかという判断は、プロの軍人さんでもかなり難しいことのようです。軍人さんも人間ですので、自分の部下が死んだり傷ついたりする戦闘では、相手にはもっと多くの被害があったはずと考えてしまうということですね。

 第二次大戦後、アメリカ軍と日本軍の両方の戦果記録を相手の被害記録と比較し、それがどのくらい正確だったか調べたという話があります。

 その結果は、どちらの戦果報告も実際の被害の4〜5倍。両軍ともにあまり冷静な判断は出来てなかったんですね。

 その、戦果誤認のもっともひどい例が大戦末期の『台湾沖航空戦』でした。この戦いで日本の海軍は航空戦力のほぼすべてを失う大損害を受けましたが、相手にはもっと損害を与えたはずと思い込み『アメリカの空母はほとんど全滅』と発表しちゃったのです。

 空母が全滅ということは、そこに積んであった飛行機も一緒に沈むか海に不時着して全部失われたということです。

 アメリカの飛行機に苦戦していた日本の陸軍は、この発表を信じて「海軍がアメリカ機をやっつけてくれた今こそ反撃のチャンスだ」と判断、フィリピンのアメリカ軍基地を襲ったところ、海軍の発表はまったくの誤報でアメリカの飛行機は大部分が健在、空を埋め尽くすほどのアメリカ機が日本陸軍に襲いかかり、数万人の部隊がほぼ全滅する悲劇となりました。

 このように「勝ったはず」「相手よりこっちが強かったはず」という思い込みは、つぎの戦いに良くない影響を残します

 外国で判定負けにされた試合は、本当にホームびいきのインチキ判定だったのか、自分のほうには足りない部分はなかったのか、ということをクールに判断しないと、次の試合も涙を飲むことになります。

 相手を見くびってはいけません。むこうだって必死なんです。


★戦いの勝ち負けの判断にはプロの軍人でも温情が入り込む。

★「本当は勝っていたはず」と言ってもなにも生まれない。


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2016年04月30日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その21 ブルース・リーは飛ばない または ネット情報のムラはどうして生まれるのか?

 このシルエットを見てほとんどの人は『ブルース・リーだ!』と一発で分かるでしょう。

 ブルース・リーさんはどの映画でもこんな飛び蹴りをしてますから。『ドラゴン危機一髪』、『燃えよドラゴン』、『死亡遊戯』でも。

 しかし、ブルース・リー夫人のリンダさんは「ブルースは飛び蹴りなんてしませんでした」「ブルースが飛ぶのは映画の中だけです」と言っています。

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2016年04月25日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その20 男として生まれた人でも女子格闘技に出られる? 生来の条件の前に権利を主張してどうなるのか?

 このブログを開始したころ、QRをウーマンリブかなんかの関係者と勘違いした人がいたみたいで、わたしたちは「そんなバカな」と笑ってました。

 だって、QRはスポーツブログです。それ以外の目的なんてありません。もしも、「主張」があるとすれば、それは「女子の立ち技は面白い!」ってことぐらいで。

 そんなわけでわたしたちは、ウーマンリブにもその反対側にも、女にも男にも味方しません。同じ意味で、性同一性障害の人にも味方しません。

 特定の誰かではなくて、日本のために、日本人全体のために、と思うことなら発言しますけど。日本人ですからそれは当然です。本来ならウチなんかじゃなくてまともなメディアが言うべきことでしょうけど、まともなメディアが無いですからね(苦笑)。

 と、QRの立場を説明したうえで、きょうはトランスジェンダーと格闘技のお話です。

 トランスジェンダーというのは「性別を越える」という意味。つまり、生まれつきの性別の壁を越えて、それ以外のところにいる人たちのことです。

 その人たちはスポーツの場面でいろいろと制約を受けています。というのも、ほとんどの競技スポーツが生まれつきの性別にもとづいておこなわれているので、それ以外のひとの立場はむずかしいんですね。

 特に格闘技では男と女が一緒に戦うことはありません。男子の体は女子に比べて、骨格や筋肉系その他、運動能力の面で大幅に上回っているので、男女が戦うことはスポーツ競技の公平性でも、安全管理面でも論外だから、当たり前ですね。

 では、生まれつきの性と自分の性の認識が違っている人の場合はどうか。その場合も、身体上の性別で競技することになります。心で競技をするのではなくて、身体でするのですから、そうなります。

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 問題は、男として生まれ、性転換手術をして女になったひとが「女子競技に参加したい」という場合はどうなるのか。

 このようなケースは西欧のスポーツ界ではいくつか例があって「人権意識」の観点などから、手術して「体つき」や「戸籍上の登録」が女性である人には女子アスリートとしての活躍を認めるべきだという動きが、すでにいくつも形になっています。

 国際オリンピック委員会は、手術して、さらに特定期間のホルモン療法を受けて男性から女性になった人には女子選手としての活動を認めることを決めています。つまり、制度上は、オリンピックのボクシング女子には元男性のトランスジェンダーが出場出来るわけです。

 しかし、この動きにQRは疑問を感じます。

 男性は一般的に女子よりも筋力、骨格、肺活量などでアドバンテージがあります。それが手術を受けたあとはどうなるのか?

 複数の医者や学者が、このアドバンテージは「性転換後ホルモン投与とともに数年を経過すれば失われる」と主張しているようです。オリンピック委員会はその学説をもとに判断をくだしたようです。

 しかし、これは性医学や生物学で判断出来る問題なのでしょうか?その学問が競技上の公正さと安全性を保証出来るのでしょうか?

 わたしたちは、スポーツの現場や、スポーツ医学からの意見こそが一番大事で、スポーツに関係のない学者のひとたちにはこの問題は守備範囲外と思います。

 実際の格闘技の現場にいるUFCデイナ・ホワイト代表は「元男性の女子競技への出場はあるべきではない」という意見です。

 UFCで女子チャンプだったロンダ・ラウジー選手も性転換選手の女子枠での出場はフェアじゃないと言っています。

 第3の性に対しておおらかと言われるタイでも、女子ムエタイに元男性の選手が出た例は、QRはまったく知りません。

 このように、現実の格闘技の世界では元男性の女子競技出場というケースは、認められない方向にあるようです。

 これとは逆に、元女性で男性となったひとの格闘技出場はどうでしょうか?

 元WBC女子世界王者の某アメリカ人選手はキャリアの最後のほうは性別のあやしい体つきになり、結局あるころから試合が組まれず、事実上のリタイアとなりました。詳しいことは分かりませんが、たぶん、男性化手術を受けて、女子ボクシングに出場出来なくなったのだと思われます。男性になったのなら、女子競技に出られないのは当たり前ですね。

 しかし、某アメリカ人選手はそのあと男子のボクシングにも出ませんでした。手術を受けたとはいえもともとが女性の場合は、男性化してもフィジカル面での不利があまりにも大きいので、やっぱり出場はむずかしいのでしょう。

 結局、手術を受けて別の性として競技することは、格闘技の世界では現実的ではないのです。

 わかってほしいのは、これは、「差別」とか「世間の理解不足」という問題ではないということです。

 どんなに力士に憧れていても、身長160センチのひとは大相撲の新弟子検査には受かりません。どんなに競艇選手になりたくても、体重100キロのひとは競艇選手の養成所には入れません。生まれ持った身体的な特徴によって、参加すら出来ず門前払いになってしまうスポーツがこの世にはいくらでもあるのです。

 これが現実です。生まれついての生物学的な条件の前では、どんなに権利を主張しても無意味です。格闘技をやりたくても身体的な理由で無理な人なんかいくらでもいます。ダメなものはダメ。ただそれだけです。

 生まれる前に戻って人生をやり直すことは出来ません。どんなひとでも与えられた条件で生きていくしかないのです。

 最後に。格闘技と「男らしさ」は無関係です。心が男だから格闘技をしなければ、というのは思い込みにすぎません。つまんないでしょう、そんな人生は。男らしさや女らしさなんてものにとらわれるよりも、大事なのは自分らしさではないですか。性差よりも個人差でしょう。

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2016年04月22日

女子のパンチでも人は死んでしまう 一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その19

 こういうテーマを書くのは気が重いのですが、大事なことなので読んだ方々は頭のどこかに覚えていてください。

 そして、「え?ストップ早すぎじゃん?」とか「安全対策大げさやろ?」と感じたときに思い出してくれると幸いです。

 一般論として、男子の身体的パワーに比べて、女子のパワーは低いです。そのため、男子の格闘技に比べて、女子の格闘技は安全だと思われていますが、それは間違いです。

 打撃系の場合、一撃KOの迫力では男子ヘヴィー級が一番ですが、では、そのヘヴィー級のKOが事故につながるのかといえば、ほかの階級に比べて特にそういう傾向はありません。つまり、パワーが一番の事故原因ではないんです。

 では、打撃系格闘技の何が危険なのでしょうか?それは連続して頭部を打たれることです。

a0960_007039続きを読む

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2016年04月14日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その18 ふつうの格闘技選手がボクシングをやってみた


K1ルール ティメア・ベリク VS イリン・ラーチェ 面白くないので全部は見ないでいいです。

 当ブログでは「タイ人選手はもうボクシングに呼ばないで」と切実な願い(!)を繰り返しております。

 というのも、タイではボクシング(特に女子)は不人気種目で、ほとんどプロ選手はいません。ですから、ボクシングをやるときにはムエタイの選手を借りてきます。

 しかし、ムエタイジムとしては良い選手はムエタイで使いたいですから、ボクシングに貸し出すのは中級からそれ以下の選手です。

 で、貸し出された選手としては、ムエタイとボクシングの基本的な技術の違いから、いくら頑張っても良い結果につながることはほとんどありません。

 技術的な違いとは、たとえば構えです。

 たいていのボクシング選手は前屈みですが、ムエタイでその構えをするとヒザが飛んで来ますし、簡単に引き倒されてしまいますので(ムエタイでは倒しも高ポイント)、タイの選手はそれを避けるためにボクサーに比べるとずっとアップライト。しかし、その構えはボクシングではボディーを打たれます。

 また、ボディーを狙われないようにボクシングではなるべく体をハス(斜)に構えますが、ムエタイでは蹴りを出しやすいように正面に構えることが多いです。

 ムエタイでは相手の蹴り足を常に視野に入れる必要上、ガードの中央をあけるのが普通。ボクシングではアゴ打たれちゃいますね。

 このように、もう、試合開始の姿勢から違いますし、蹴り、ヒザ、ヒジ、つかみが禁止のボクシングでは、ムエタイのコンビネーションは全然使えません。

 これでいったいどうやって勝てと?

 いや、勝ってる選手もいます。

 キックとムエタイの両方で世界王者だった『キックの鬼姫』こと早千予(さちよ)選手はボクシングでも世界王者でしたし、早千予選手とキックで戦ったつのだのりこ選手もOPBF東洋王者、ルシア・ライカ選手はキック/ムエタイで戦う相手がいなくなってボクシングで世界王者になりました。『怒りの鉄拳』と呼ばれたジェリー・サイツ選手もキック、ムエタイ、ボクシングのどの競技でも強かったですね。ホリー・ホルム選手やレイラ・マッカーター選手、ジャッキー・ナヴァ選手なども元々はキックボクサーです。

 でも、この人たちは例外なんです。ふつうの選手ではそうはいかないんです。

 この人たちの影に、たくさんのキック、ムエタイ、空手出身の選手が、ボクシングで通用しなかった歴史があるのです。

 たとえば、いちばん上に貼った動画のティメア・ベリク選手(ピンクのコスチューム)はハンガリーのムエタイ選手。これは昨年秋の試合です。

 ベリク選手はもともとムエタイなのでこのK1ルールの試合では苦戦し、判定負けでしたが、特に悪くはない選手だと思います。良くもありませんが。ふつうですね。

 しかし、今年3月にボクシングの試合に出たところ、最低の試合になってしまいました。
マリア・リンドバーグ VS ティメア・ベリク 2016年3月20日

 相手に打ち返す時、続けてキックのモーションに入ってしまって観客席失笑という試合スタート。その後も、右ストレートのあとに何につなぐか迷って体が正面に向いたままのところを打ち込まれるなど、素人レベルの惨敗。

 相手がWIBA世界王者のマリア・リンドバーグ選手だということもありますが、これが「ふつうの格闘技選手がボクシングに出たときのふつうの結果」なのです。

 ふだんボクシングをしないでほかの種目に出ている選手は、ボクシングのリングでは基本的に通用しません。

 しかし、QRは、ほかの種目の選手がボクシングに出るなとは言いません。それは、上にあげた早千予選手やルシア・ライカー選手のような例外的なスゴイ選手があらわれる可能性があるからです。

 そのような選手が殴り込んでくればボクシングも盛り上がります。だから、他種目からの参入は規制するべきではありません。実際、ほとんどの国ではそんな規制はありません。

 しかし、日本ではJBCさんがほかの種目の選手に対し、それをやめない限りボクシングのリングには上げない、という世界でも類を見ないルールを持っているので、他競技の格闘技選手がボクシングをすることはありません。

 その一方で、JBCさんは、タイ選手に関して彼女たちがボクサーではなくムエタイ選手だということを知りながら来日を認めている(JBCさんはマッチメーカーや関係者に対して「招聘の際はムエタイの戦績も提出せよ」と要求)という矛盾。

 最初に書いた通り、タイの優れた女子ムエタイの選手はボクシングでは来日しませんから、いくら中級以下のムエタイ選手を呼んでもろくな結果にはならないのです。

★ほかの競技の選手がボクシングのリングに上がっても戦えないのがふつう。

★しかし、ふつうを越えた例外的な選手がときおりいるので、他競技の選手のボクシング参入を規制してはいけない。

★日本ボクシング界の最大の外国人選手供給国であるタイには女子プロボクサーは事実上いない。良いムエタイ選手はムエタイで忙しいので、来日するのはムエタイの中級以下。

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2016年04月10日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その17 素朴な疑問「理由の無い中断」「下がって正面に立つ」動きを日本人はいつまで続けるのか?

 むかし、ブルース・リーさんは言いました。
攻撃は続けば続くほど良い。途中でやめる理由はない。

 このことばを知った時、無茶なこと言うなあ、と思いました。だって、攻撃が続けば続くほど良いのは当然としても、実際には一発打ったり蹴ったりすればそれだけ体のバランスが崩れるわけですから、どこかで修正のために区切りが必要ですし、体力の問題もあります。だから無限の攻撃なんか不可能です。普通は。

 しかし、この人の出現でリー先生のことばが実際上も正しかったことが自分にも分かりました。見て下さい、アンディー・サワー選手の相手が倒れるまで続く無限の攻撃を。


 これぞ途中でやめる理由の無い理想のファイター。打っても蹴っても飛んでもまったく崩れないバランス、見事なコンビネーションです。

 一方、日本にはむかしから「一撃必殺」ということばがあるためか、それにとらわれ過ぎている人が多いように思います。そのため、主な攻撃が単発攻撃だったり、連打も「単発の繰り返し」になっているのかもしれません。

 しかし、冷静に考えれば、わたしたちアジア人は海外の筋肉質で大柄なひとたちには一撃の重さでは勝てないんですから、どうしたってキッチリつながる形の多段コンボが必要になってきます。リーさんのことばはそれを言っているわけですね。

 そして、その正しさを欧米人としてはとても小柄なアンディー・サワー選手が実際に見せてくれたのです。サワー選手と同じことをみんなが出来るはずもありませんが、コンビネーションの大事さは忘れないようにしたいですね。

 また、わたしたち日本人に染み付いているもうひとつの問題は、何らかの理由で自分から攻撃を中断したときに自然に出てしまう「一歩下がる」動きです。

 柔道や空手や剣道では「始め」のときの立ち位置を「開始線」と呼び、試合中に主審から「待て」と言われればその線に戻って再開を待ちます。もしかしたらその時の「開始線に戻る」習慣が、一歩下がる動きにつながってるのかもしれません。

 ボクシングやキックに開始線はありませんが、ふだんの練習でワン、ツー、スリーのあとなどに一歩戻る習慣がある人はリングではそれが出ないようにしなければなりません。

 レフリーにブレイクを命じられたら指定の位置まで下がりますが、自分の都合で攻撃を中断したときは下がる必要はありませんし、相手の正面に立つ必要もないのです。

 むしろ、何かの理由で攻撃を切ったあとには、下がらず距離はそのままで、自分の位置を左右にずらすのが大事。海外のすぐれた選手はそのようにしていますが、日本人選手は一歩下がって「正面に立つ」人が多すぎます。

 下がらない正面に立たない、そしてなるべく攻撃を切らなくてもいいように普段からコンビネーションを長く続けるようにしていれば日本の選手はもっともっと大活躍出来ると思います。

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2016年04月06日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その16 MMAは「実戦的」? 戦闘とスポーツの違いを考えてみる

 わたしたちが見て楽しんでいるプロ格闘技というものは、実際の格闘、つまり、おまわりさんが犯人を制圧する逮捕術や、軍隊の戦闘術、ケンカ術、護身術とは似ているけど違うものです。

 もちろん、反則規定の有る無しこそがもっとも大きな違いですが、それ以外には何が違うでしょうか。

 例えばMMAのチャンピオンの試合なんか見ていると本当に強そうに見えますし、もしかしたら最強なんじゃないかと思ってしまいます。だって、打撃も出来るし、関節も出来るし、立っても、寝ても、戦えるんですから。

 しかし、MMAは地面じゃなくて、マットの上でのスポーツです。だから投げられても平気。

 けれども、逮捕や、戦闘や、ケンカや、護身は、地面や路面や固い床などの上で発生します。この場合、投げられたり、倒されたりするだけで大ダメージは避けられません。

 実際、柔道経験者がケンカに巻き込まれて投げで勝った話はいくらでもあります。街の普通の環境で投げられたら骨なんか簡単に折れてしまうので。

 柔道が投げで一本勝ちを認めるのもうなずけますね。

 また、MMAと違って現実の世界には金網は無いので、相手がひとりである保証はありません。途中で助っ人が来る可能性を考えれば、寝技は最初から考えないほうが実際的です。
『ピーク・サブミッション』(アメリカ/グレー)VS 『サンダPFC』(ラトビア/ブルー)

 寝技の際は、自分が上であろうと下であろうと極端に視野が狭くなることも忘れてはいけません。

 そのため状況判断能力が非常に低下するんですね。つまり、相手の人数が増えたり、相手がポケットから武器を出したり、相手が石や棒などを拾ったりした場合に、それに気が付くのが遅れてしまいます。これは本当に危険です。

 ここに上げた動画は、昨年おこなわれたMMAの多人数チーム戦ですが、ひとりでも人数の均衡が崩れたらあとは寝ている人がタコ殴りになって勝負が決まることがハッキリわかると思います。グランド状態はとても危険ということです。

 もともとは軍隊格闘技であるムエタイで、倒されると大きくロストポイントになる意味はこういうことなんですね。

 そういうわけで、MMAを「実戦」にそのまま使おうとすると「投げられるダメージを過小評価している」そして「寝技に重点を置き過ぎている」というふたつのことがネックとなってしまいます。

 逆に言えば「実戦で使用出来る格闘術」としては、「投げられない」「寝ない(テイクダウンしてもすぐ立つ)」ことが必須条件と言えるでしょう。そして、いつでも移動出来るように立っていることも生命線なのです。

 でも、現代では、ひとまえでおこなわれるすべての格闘技はどこまで行ってもスポーツです。今回の動画のようなクレイジーな団体戦でも(笑)。

 だから、格闘技が盛んになることは平和の象徴だと思います。戦争になったら格闘技なんかやっていられませんからね。

 最後になりますが、QRは戦わなくてもいい状況に身を置くことが最高の護身だと考えます。危ないところに近付かない、危険を知らせる情報には常に敏感である、それがどんな時でも一番大事。あぶないと思ったらすぐに逃げましょう。

 感覚を研ぎすまして自分と自分の大切な人を守りましょう。

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2016年02月29日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その15 タイ人が最後まで戦わないのはなぜ? リアルライフとアドベンチャーの間

 最終ラウンド、リードしている選手が突然攻撃をやめて両手をヒラヒラさせて踊り出す、こんな光景をムエタイファンならどこかで見たことがあるでしょう。

 これはセコンドから「もう勝ったから充分だよ」というサインが出たということです。それで、嬉しさのあまり踊り出したのか、残っている時間になんにもしないで突っ立っているわけにもいかないのでファンサービスでやっているのか、そのへんは分かりませんが(笑)、とにかく「もう勝ったから戦わないよ」という意思表示なんですね。

 そんなタイ選手を見て「?」となる人は多いでしょう。

 ムエタイは死者が出るのも日常茶飯事の地獄のような格闘技ではなかったのか?食べるためのハングリー精神でいっぱいの情け無用の弱肉強食世界じゃなかったのか?

 それはそうなんですが・・・死人がたくさん出ていたのは数十年前の話で、それは選手と関係者とムエタイ自身の変化によって今は昔の話になっています。

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 貧しさゆえに倒し合う弱肉強食の世界というのもウソではありませんが、小さいときから青年期までずうっと極貧なわけでもなく、プロになってからは強い男子選手はムエタイでご飯が食べられます。

 日本のプロボクサーやプロキックボクサーのほとんどが競技収入では生活出来ないのとは大きな違いで、こうなると「貧しさ故の」という考え方はタイのプロでは場違いだと言えると思います。

 以前にご紹介した『リトルファイター 少女たちの光と影(バッファローガール)』という映画に登場したペットとスタムというふたりの女子小学生は本当に貧しさから家族を救おうとして戦っていましたが、いまも選手としてやっているかはわかりません。でも、たぶん、フルタイムの選手としてはやってないでしょう。

 というのも、本当に貧しい家の子供たちは成長して中学を出たら、ムエタイじゃなくて、ちゃんと就職したほうが生活が安定しますし、女子選手には男子のようにジムに住み込む制度が無いのです。

 もちろん、働きながら少しでも多くの収入を得るために戦い続ける人もいますけど、当ブログで取り上げているタイの女子ムエタイ選手の多くは高校生か大学生です。彼女たちは特に貧困生活をしているわけではありません。しかし、決してムエタイは遊びではなく、ファイトマネーで学費を払っていたりするのです。

 つまり、多くの女子選手は普通の生活をしている普通の女の子ですが、実質上ノーギャラに近い状況でも格闘技をやめない日本の女子選手たちとは違って、タイの女子選手にとってファイトマネーは大事なものです。1万円でも2万円でも本当に大切なお金です。

 日本の4回戦ボクサーは1試合の手取りが3万円あるかどうか。それ以外の格闘技も似たり寄ったり。ハナからあきらめて別の仕事を持っているわけですが、タイの男子選手はムエタイが職業です。

 ルンピニーとかラジャダムナンで名前が知られた男子選手はファイトマネーは30万円以上になるらしいですが、生活は出来ても贅沢は出来ない金額です。

 それで食べてると言えば聞こえはいいですが、逆に言えば、戦い続けないと収入がありません。

 日本のボクサーはKO負けすると体調回復のために3ヶ月の休養が義務づけられますが、タイではそんなに休んだら食べていけないのでKOされても1ヶ月で試合復帰です。

 しかし、無理な復帰をしたら試合どころか命の危険もあります。そのことはみんな分かっているので、ムエタイでは無駄に相手をボコボコにはしません。勝てばいいんです。

 日本の選手は「いつか世界チャンプになってあのベルトを腰に巻く」という夢に向って挑戦しているので、たとえボロボロになっても燃え尽きるまで相手に挑んでいきますし、相手もそれに応戦します。その「挑む」姿勢をお客さんも喜びます。選手もお客さんも夢に向って一緒に旅立っている感覚になるし、それは青春の挑戦、ビッグアドベンチャーなのです。

 一方、タイの選手にとっては一戦一戦は仕事であり、リアルライフなんです。たいていの場合、ひとつかふたつ先ぐらいまでの試合予定は入っています。だから、この試合にのめり込み過ぎて次の試合に影響を残すわけにはいきません。次の試合にいい動きが出来なければ、プロとしての自分の評価が下がることになり、それはその試合を組んでくれたプロモーターやファンを裏切ることでもあります。

 もちろん彼らも血みどろの極限マッチを見せることがあります。それは賞金付きのビッグマッチやテレビマッチ、トーナメント、絶対に負けられない遺恨試合など、プロとしての飛躍点になると判断した試合の場合です。その時はまったくセーブしないフルパワーを見せます。これがかれらのプロとしての考え方なのでしょう。

 日本とはずいぶん違いますけど、これも正解だと思います。

 来日したタイ選手が一番怖さを見せるのはタイ国王の写真をリングに持ち込んでいる試合。それは「何がなんでも勝つ」という意思表明です。そんな試合は一瞬も見逃さずに注視しましょう。絶対にすごいです。

*タイの選手にとってはファイトマネーは重要な収入。
*日本の選手は試合以外の収入で生活している。
*タイの選手にとって試合を多くこなしてより多く稼ぐのがプロ。
*日本の選手にとっていまは稼げなくても将来の栄光に向って戦うのがプロ。

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2016年01月29日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その14 選手名はローマ字読みでオッケー?その2 E・メイディエの読み方 読めそうで読めないアジア選手のローマ字名

 今回も外国人の名前について書きます。外国と言っても中国や韓国はご近所なのでなんとなく名前も読みやすいように思いますが、実は大きな問題があるのです。

 例えば、朱里選手と戦って日本でも知られるようになった中国の実力者ウ・メイディエ選手。英語で書くとE Meidieなので「Eがどうしてウなの?」と思う人もいるでしょう。

 たしかにEを日本式にローマ字読みすればエですが、中国語ではEの発音はエではなく、日本語には無い音で、具体的には「アの口でウー」と言う音とのことです。

 と言ってもよく分からないので、この動画の中国人アナウンサーのコールをお聞きください。
2014年10月5日 ウ・メイディエ VS コリーナ・カーレスク(ルーマニア) 5th Oct 2014 Meidie E VS Corina Carlescu

 お聞きのように「エ」でもなければ「イ」でもありません。「ウ」が一番近いかなと思うので、当ブログでは「ウ・メイディエ選手」と書いています。

 このように、中国語のローマ字表記の読みは日本式とは全然違うんですね。

 ですから、中国の鉄拳女王ワン・カハン選手のローマ字表記のWang Kehanも日本式のワン・ケハンとはなりません。

 これはもう理屈でもなんでもなくて「中国ではそうだから」と思ってください。日本式のローマ字読みはあくまでも日本式でほかの国では違うのです。
ワン・カハン VS エカテリーナ・ヴァンダリエヴァ Wang Kehan VS Ekaterina Vandaryeva

 同じことは韓国の選手にも言えます。彼女たちのローマ字表記も日本式とはまったく違います。

 軽量級女子ボクサーで日本を含むアジアのナンバーワンの実績を誇るパク・ジヒョン選手のローマ字表記はPark Ji-Hyun。

 元WBO世界王者のホン・ソヨン選手はHong Su-Yun。これを一部の日本の関係者さんやライターさんはホン・スヨンと書いているようですが、ソヨンとスヨンは全然違う名前です。表記も違います。たとえば、少女時代スヨンさんの表記はSoo-Youngです。

 日本でも有名な韓国女子キックの看板、イム・スジョン選手のローマ字表記はLim Su-Jeong。アマボクシングで活躍し、リオ五輪を目指していた女優のイ・シヨンさんは肩の故障のため選手生活継続を断念したらしいですが、彼女のローマ字表記はLee Si-young。イムがLim、イがLeeなんて想像外ですよね。

 韓国の人のローマ字表記は本当に難しいです。正式な法則性と慣習による表記が入り交じっているようなので、同じ名前でもローマ字表記は人によってブレが大きいらしく、外国人にはほとんど読めません。でも、決してめちゃくちゃなわけではなく、調べればなんとかなるのでプロのライターさんにはちゃんと調べて書いてほしいと思います。

ホン・ソヨン

 韓国人選手の名前の表記でひどいのは、日本の新聞記者さんが時々やるのですが、「崔賢美」のように漢字だけで書くことです。こんなのふつうの日本人が読めるわけありませんね。読者のことをまったく考えてないとしか言いようがないです。崔賢美とはチェ・ヒョンミ選手のことですが、もちろんQRも読めません。

 もっと悪質なのは勝手に読み方を変えることです。富樫直美選手などと戦った韓国のソン・チョロン選手はその後も来日しましたが、「チョロンでは弱そうだから」と勝手にチョーロンに変えられたらしいです(苦笑)。

 ちなみに韓国のリングアナウンサー式の読み方では「ソン!チョ!ロン!」であり、チョーロンではありません。というか、韓国ではチョーのように伸ばす音はほとんどないらしいです。

 前回も書いたとおり、外国の人の名前を日本語であらわすことは不可能ではあります。

 しかし、全然調べないでテキトーなカタカナを当てたり、勝手に読み方を変えたり、他人様の名前にそういう態度は考え直しましょう

 情報の正確化という意味でもプロのみなさんにはもっとちゃんとしてほしいものです。

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2016年01月21日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その13 ブアカーオはバンチャメーク? 選手名はローマ字読みでオッケー?

 このブログもずいぶん続いてきましたが、海外の選手の記事を書くとき、いまだに苦労するのがその選手の名前の読み方です。特に、ウチで扱うような女子の格闘技の選手は、日本初紹介になることが多く、参考になるような前例がほとんどないのです。

 それでも、「外国人の名前なんて結構日本でも紹介されているから、そんなに大変じゃないはず」と最初は思っていたのですが、ブログを始めてすぐ気付いたのは「カタカナになっている外国人の名前なんてほんの一部でしかないんだ」という現実でした。


 珍しい名前でなおかつ読みも難しかったのは、現UFC女子ストロー級王者のヨアンナ選手。彼女はキックボクサーとして初来日したのですが、その時、日本のプロモーターさんが使ったリングネームは「ジョアンナ」。再来日の時は別のプロモーターさんが招聘したため「ヨアンナ」のリングネームに変わりました。

 ポーランドの選手なので英語読みのジョアンナよりもポーランド風のヨアンナの方がウチとしても正解だと思い、その時から記事を書く時はヨアンナに統一しました。しかし、問題はフルネーム表記です。日本のプロモーターさんはヨアンナとしか書きませんでしたが、海外ではフルネーム表記が基本なのでQRとしてもカタカナのフルネームを書く必要がありました。

 しかし、Jedrzejczykという名前をカタカナにした例はどこにも見つからず、三日三晩と三分間悩んだ結果、海外の動画でのリングアナウンサーの発音を参考にしてヨアンナ・イェドジェイチクと表記しました。

 彼女のホームのリングアナウンサーの発音が聞ければそれが一番いいのでしょうが、ポーランドでの動画が見つからず、複数の動画を検討してイェドジェイチクとしたのです。

 当時は彼女のフルネームを書いている日本のサイトは皆無だったのですが、彼女がUFCで活躍し始めるとちらほら日本語化されるようになり、イェイセンシック、イェンジェイチックなどの変化を生みながら、現在はUFCの公式日本語サイトの表記であるヨアンナ・イェンドジェイチェクが定着しているようです。ウチとしては結構近い表記になったので、上出来だったかなと思っています。

 UFC関連で言えば、去年衝撃のKO勝利で女子バンタム級王者となったホリー・ホルム選手。 当ブログではボクシング王者時代から長年ホリー・ホルム表記で記事を書いていましたが、彼女がUFCに参戦してカタカナ化され始めた時にUFC公式サイトの表記はホリーじゃなくてホーリーとなっていました。

 どっちが正しいわけじゃないですが、どうしてもズレちゃうんですよね。だって、Holly Holmというシンプルな名前なのにホリー/ホーリー、ホルム/ホーム、どう書いたって間違いじゃないので。

 と、思ってたら、つい最近、公式サイトもQRと同じホリー・ホルム表記になったのでひと安心。
ジェリーナ・マジョナヴィッチ VS リンジー・ガーバットIII

 ボクサーで難読で印象に残っているのは超級ハードパンチャーのジェリーナ・マジョナヴィッチ選手。Jelena Mrdjenovichという綴りなのですが、住んでいるのが英語とフランス語が混じっているカナダなので、Jelenaをフランス語読みすればエレナ、しかし後半は東欧系の名前なので、全体としては何語を基準にすればいいか見当もつきません。

 結局、動画を探し回ってリングアナや解説者の人の発音を参考にジェリーナ・マジョナヴィッチという表記に決定し、数年にわたっていくつもの記事を書いた後、彼女の来日が決まりました。その時、日本のプロモーターさんがつけた名前がジェレナ・ムルドジェノビック。ストレートなローマ字読みです・・・。

 ウチの記事では読者さんの混乱を避けるためにマジョナヴィッチ[ムルドジェノビック]と書きましたが、本音を言えば、いくらなんでもムルドジェノビックはあんまりだと思いました。

 選手の名前の表記は、なるべく多くのリングアナのコールを参考にするのがウチの基本です。ムルドジェノビックなんてコールは世界中で後楽園ホールのたった一回しかないのですから、参考にも何にもなりませんが、日本のボクシングではリングアナのコールが絶対ということになるのでムルドジェノビックが正式だそうです。仕方ないですね(苦笑)。

 外国選手の名前を日本風のローマ字読みにしちゃうのって、いまだに多いようです。

 例えば、ブアカーオ選手のリング名Buakaw Banchamekはカタカナでブアカーオ・バンチャメークとなっています。本当は最後のKは発音しないで口をKの形にするだけなので、タイ語や英語や中国語のアナウンサーはバンチャメー、バンチャメッみたいな発音で、「ク」を付けているのは日本だけです

 英語のMuscle(筋肉)はマッスル、Knee(膝)はニーですよね。CやKがあるからといって、マスクルとかクニーとは読みませんね。これはもう理屈じゃなくて、そうなんだから仕方がないんですが、日本ではどうしてもCやKを読んじゃう例は後を絶ちません。

 ジョアンナがヨアンナになったり、ホーリーがホリーになったりしたように、バンチャメークも将来バンチャメーになるかもしれませんけどね(?)。

 最後に、2月に来日が決まった天才ムエタイ少女、ペッチージャー(Phet Jee Jaa)選手の名前がこれまたローマ字読みで「ペットジージャ」になっているのにはびっくり。

 そりゃあ、チョコレートファイターなどの映画で知られた女優のジージャー(Jee Jaa)さんの名前にPhetが付いているのでペットジージャにしたいのも分かりますが、タイの動画でのコールを聞く限りはペッチーチャーあるいはペッジーチャーぐらいが落とし所でしょう。最後のジャーが上がる音なので少なくてもジャではないと思います。

 外国語を日本語表記にするのは不可能だし、誰だか分かればそれでいいのかもしれませんが、阿部(Abe)さんがエイブとか、加藤(Kato)さんがケイトって英語風に読まれたらイヤですよね。

 だから、その辺の気遣いは忘れたくないなあと思うのです。

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2015年12月10日

ムエタイの判定でパンチのポイントが極端に低いのはなぜ? 一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その12

 試合形式が現代のものに定着する以前の伝統スタイルのムエタイは、拳に麻ひもを巻いただけのベアナックルでの戦いでした。

 以前にも書いたとおり、ベアナックルのパンチではKOがなかなか出ません。そこで、19世紀の後半からボクシングではパンチ力増幅器としてのグローブを採用しましたが、ムエタイではパンチのほかにヒジ打ち、蹴り、組み技など多彩な技があり、ベアナックルでも決着が付きやすかったため、パンチ力増幅のためのグローブの必要はありませんでした。

 しかし、20世紀にリングの導入がおこなわれたのと同時にムエタイでもグローブが採用されました。これは、ベアナックルで殴り合った際の外傷の激しさを軽減するためだったと思われます。

 そのころのムエタイは現代のスポーツムエタイとはことなり、まだ武術や武道としての面影が色濃く残っていたので、判定の基準は相手により多くのダメージを与えることでした。つまり、現在のキックボクシングと同じように、パンチでの加撃もキックでの加撃も同じように採点されていたということです。

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 その後、タイが経済的に成長し、人々に生活の余裕が出来るにつれて、ムエタイ観戦は人々の娯楽として欠かせないものとなっていきます。そして、しだいに人気選手はファイトマネーで生活が出来るようになり、プロムエタイ選手という職業が生まれました。続きを読む

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