リングの安全

2016年04月22日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その19 女子のパンチでも人は死んでしまう

 こういうテーマを書くのは気が重いのですが、大事なことなので読んだ方々は頭のどこかに覚えていてください。

 そして、「え?ストップ早すぎじゃん?」とか「安全対策大げさやろ?」と感じたときに思い出してくれると幸いです。

 一般論として、男子の身体的パワーに比べて、女子のパワーは低いです。そのため、男子の格闘技に比べて、女子の格闘技は安全だと思われていますが、それは間違いです。

 打撃系の場合、一撃KOの迫力では男子ヘヴィー級が一番ですが、では、そのヘヴィー級のKOが事故につながるのかといえば、ほかの階級に比べて特にそういう傾向はありません。つまり、パワーが一番の事故原因ではないんです。

 では、打撃系格闘技の何が危険なのでしょうか?それは連続して頭部を打たれることです。

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2015年12月10日

一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その12 ムエタイの判定でパンチのポイントが極端に低いのはなぜ?

 試合形式が現代のものに定着する以前の伝統スタイルのムエタイは、拳に麻ひもを巻いただけのベアナックルでの戦いでした。

 以前にも書いたとおり、ベアナックルのパンチではKOがなかなか出ません。そこで、19世紀の後半からボクシングではパンチ力増幅器としてのグローブを採用しましたが、ムエタイではパンチのほかにヒジ打ち、蹴り、組み技など多彩な技があり、ベアナックルでも決着が付きやすかったため、パンチ力増幅のためのグローブの必要はありませんでした。

 しかし、20世紀にリングの導入がおこなわれたのと同時にムエタイでもグローブが採用されました。これは、ベアナックルで殴り合った際の外傷の激しさを軽減するためだったと思われます。

 そのころのムエタイは現代のスポーツムエタイとはことなり、まだ武術や武道としての面影が色濃く残っていたので、判定の基準は相手により多くのダメージを与えることでした。つまり、現在のキックボクシングと同じように、パンチでの加撃もキックでの加撃も同じように採点されていたということです。

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 その後、タイが経済的に成長し、人々に生活の余裕が出来るにつれて、ムエタイ観戦は人々の娯楽として欠かせないものとなっていきます。そして、しだいに人気選手はファイトマネーで生活が出来るようになり、プロムエタイ選手という職業が生まれました。続きを読む

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2011年06月27日

ボクシングマガジンさん、しっかりしてください 山口卓也選手負傷/中村幸裕選手反則負け事件について

 Boxing

 ボクシングマガジンさんの最新号に不思議な記事があります。

 「一瞬の判断にミスが許されないレフリーに課せられた重い責任」と題された文章で「先日、後楽園ホールであった事故」について書かれているのですが、どの試合のことなのかがまるで書かれていないのです。

 もちろんこれは6月8日におこなわれたスーパーバンタム級8回戦中村幸裕 VS 山口卓也戦のことなんですが、そのことをどうしてぼかす必要があるのでしょう。ハッキリ書いてはいけないことなのでしょうか?

 実際の記事はこんな感じです。まず、「レフリー、ジャッジというのは、つくづく辛い立場にいると思う」という前置きから、結論としては「一度起きてしまった事故をしっかりと検証し、問題点を洗い出し、2度と事故を起こさないこと」となっていて、ここだけを見れば実におっしゃるとおりです。

 しかし、自身で「事故をしっかりと検証し、問題点を洗い出」すことが「大事」と書いておきながら、記事では事故の原因を間違った表現をしていて、全然問題点を洗い出せていません。

 記事では事故の原因をレフリーが「選手からはなれた位置でストップをコールしたため」としていますが、このときのレフリーは本当は距離ではなくて立ち位置を間違っていたのです。
レフリーの立ち位置

 レフリーは試合中の立ち位置をはっきりと規定されていて、出来るだけ図のAのような位置にいることが要求されています。このように、ふたりの選手に対して自分が三角形の頂点になるように立つのがボクシングのレフリーの基本なのです。しかし、この試合でレフリーが立っていたのはBの位置です。ふたりとほとんど直線上で中村選手の死角に入っていました。これでは中村選手からレフリーの動作が見えるわけがありません。

 そして、次にはストップのタイミングを間違っていました。レフリーは単に中村選手のテーピングを直したかっただけなのだから、ふたりが打ち合う最中ではなく、ちょっとだけ待てば良かったのです。

 それだけのことです。それだけのことをおろそかにしたために山口選手は重傷を負ってしまったのです。

 また、この時レフリーは中村選手に反則減点の処置をしたあとで、山口選手が試合続行不可能なほどの重傷であることが明らかになったために、さらにもう一度反則負けという処置を言い渡しました。つまり、ひとつの案件で二度罰したのです。これもレフリーの今回のミスのひとつとして明確に挙げなくてはなりません。

 けれども、この記事でもうひとつ不備なのは、同じ日におこなわれた65kg契約8回戦塩谷智行 vs 沼田康司戦で起こったメッタ打ち見逃し事件について、まったく書いていないということです。どちらかといえばこの事件のほうがレフリーのミスとしては悪質で、一歩、いや半歩間違えば人の命に関わる大事件になるところでした。

塩谷智行 vs 沼田康司

 この試合を裁いた福地勇治レフリーは、以前にも何度か選手が打たれすぎた事件の当事者で、ボクシングマガジンさんが「一度起きてしまった事故をしっかりと検証し、問題点を洗い出し、2度と事故を起こさない」と本気で望むのなら、今回の福地レフリーのパフォーマンスについてまったく触れないのは理解が出来ません。

 ボクシングマガジンさんと、レフリーのひとたちと、ボクシングファンに共通する一番大事なものは何でしょう?それはもちろん、実際にリングで戦う選手ですね。

 「適切なレフェリング、正しいジャッジを毎回するのが当たり前。それがちょっとでもブレたりすると、たいへんな非難の的になってしまうことがある」とレフリーに対して気を使うのはいいのですが、それよりも大事なのは選手の健康です。

 はっきり言って、ボクシングのレフリーが「たいへんな非難の的になる」ことが今まで何度あったでしょうか?野球のレフリーのミスがワイドショーやスポーツニュースで取り上げられて全国から叩かれるのを見たことは何度かありますが、ボクシングでそんなことが過去にありましたっけ?

 サッカーのレフリーなんか選手と一緒に90分以上走り回りながら(選手に交代はありますがレフリーにはありません)、疲労の極致にあっても正確に裁くのが仕事です。正しいジャッジをしてもそれを理解しない数万人のお客さんからブーイングを受けることもあります。それに比べてもボクシングのレフリーの「大変さ」を強調しなければならないのでしょうか?ミスの内容を具体的に記すことさえ遠慮すべきなのでしょうか?

 ボクシングマガジンさん、もう少し毅然とした態度でこの業界のご意見番として機能してください。わたしたちのリングはわたしたちボクシング好きが当事者意識を持って接していく以外に守る方法はないのですから。

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2011年06月08日

あまりにも酷いレフリング 選手の安全は誰が守るのか ボクシング

 Boxing

 2011年6月7日の後楽園ホールの大会であまりにもひどいレフリングがおこなわれ、二つの試合でふたりの選手が非常に危険な目にあいました。

 まずは、セミファイナルのスーパーバンタム級8回戦中村幸裕 VS 山口卓也戦。この試合は両者がダウンを奪い合う激しい試合で観客席も大変に盛り上がっていました。

 第4ラウンドの中盤、中村選手のグラブのテーピングがほどけてきているのを見たレフリーが試合のストップを命じますが、その直後に中村選手の強烈な右ストレートが山口選手に命中、山口選手は打撃のダメージとダウンの際に足をひねって負傷したために戦闘不能に。しかし...

中村幸裕 VS 山口卓也
 写真でお分かりのように杉山利夫レフリーは中村選手の真後ろからストップを命じており、レフリーの動作は中村選手にはまったく見えていなかったのです。一方の山口選手はレフリーがふたりに近付きながら停止を命じているのが見えていますので、中村選手よりも早くストップの指示を理解して動きを止めていました。その結果、まったく無防備な山口選手に、まったくストップの指示に気がついていない中村選手のパンチが直撃したのです。

 この時、レフリーは「ストップ、ストップ」と比較的大きな声で命じていますが、その前後に両者の応援や観客の歓声で場内は大変ににぎやかになっており、中村選手には指示の声が充分聞こえていない可能性があります。

 しかも、レフリーが声をかけたタイミングが最悪でした。すでに中村選手は左フックから右ストレートという一連の流れに入っているところだったので、彼の耳にストップの声が入ったとしてもパンチを止めることが出来たかどうかは大いに疑問です。

 基本的にレフリーは両者の目に入る位置に立ち、流れの切りのいいところで、はっきりと停止を命じるべきで、この部分でまずミスがあったと思います。

中村幸裕 VS 山口卓也
 このあとリングアナが「スリップダウン」をコール。レフリーはダメージの大きい山口選手をリングに立たせ、ニュートラルコーナーに連れて行って2分間の休憩を与えます。パンチを当てた中村選手は重大な反則だったということで2点の減点という重い裁定

中村幸裕 VS 山口卓也
 しかし山口選手はご覧のような状態でとても試合が続行出来るようには思えません。

 このあとレフリーが本部席と長い相談。結局、試合は「あきらかにパンチを止められるタイミングなのに止めなかったという悪質な反則」という説明付きで中村選手の反則負けということに。

 このアナウンスが流れると場内には激しいブーイングと非難の声。ボクシングのお客さんはキックや総合格闘技のお客さんに比べると非常におとなしく、レフリーの裁定に対してもこれほどの抗議の声が上がることは珍しいのですが、今回は大変に場内が騒然としました。

 もしも本当に「悪質な反則」があったのであれば、反則がおこなわれた時に即座に反則負けにするのが本当です。いったんは回復までの休息と減点で事を収めようとしたにもかかわらず、ダメージが深いとわかったら急に方針を変えて反則負けというのでは、判断の基準がどこにあるのかわかりません。

 今回は、そもそものストップの指示が不適切であったので、「選手の反則」というよりも「レフリーの過失」という要素が大きく、当然、ノーコンテスト扱いとなるべきです。

 体に深いダメージを負ってしまった山口選手、本人の過失ではない反則負けを付けられてしまった中村選手、ともに本当に気の毒です。

塩谷智行 vs 沼田康司

 さて、この日はメインの65kg契約8回戦塩谷智行 vs 沼田康司でも見るに耐えないレフリングがおこなわれました。

 元日本ウェルター級王者の沼田選手がまさかの不調で、打たれる場面が多く、4回には上の写真のようにロープ際や赤コーナーで一方的に被弾。もうこれで試合終了かと思われましたがレフリーはじっと見ているだけでまったく止めません。最初のピンチでは30秒間、次は20秒間、沼田選手が塩谷選手にメッタ打ちされますが止めません

 苦しみながら5回を切り抜けた沼田選手ですが、やはり動きが悪く、6回中盤にはまたもやラッシュをうけて15秒のあいだ一方的に打たれ続けます。しかし、試合は続行。

塩谷智行 vs 沼田康司

塩谷智行 vs 沼田康司
 6回、残り時間50秒のところで今度はニュートラルコーナーに張り付けにされた沼田選手。フック、アッパーの嵐をまったく無抵抗で受け続けます。観客席からは「止めろ」「もういいだろ」と声。

塩谷智行 vs 沼田康司

 ついには体が前屈みに「く」の字になり、もはや崩れ落ちる寸前。しかし、福地勇治レフリーはこの回の終了のゴングが鳴るまでまったく動かず、メッタ打ちの沼田選手を見守るのみ。その50秒の間に沼田選手が受けたパンチは70〜80発ぐらいはあったでしょうか。

 6回終了後にフラフラと自陣コーナーに戻る沼田選手のダメージの深さは誰の目にも明らか。そして、そのままインターバル中に棄権...。

 大昔はこのような場面が少なくなかったボクシングですが、近年になって「細かい連打を浴び続けるのが危険」という認識が広まるにつれて、一方的に続けてラッシュを浴び続ける場面では試合を止めるのが常識となっています。

 今回はどうしてその常識が発動しなかったのでしょうか?一歩間違えば大事故という場面がどうして放置されたのでしょうか?リング禍が連続するときは早めのストップが多かったボクシング界ですが、最近は危機感が薄くなっているのかもしれません。

 事故が起こってからでは遅すぎます。いまこそ猛烈に反省していただきたいと思います。


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2011年01月21日

リングの危険を考える

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 一生忘れられないことがあります。十数年前のことですが、わたしたちが観戦した試合で、ひとりの選手が亡くなっているのです。

 その試合は、日本ボクシング界とびきりのいいカードで、どちらの選手も好きでした。すごく期待して見に行きましたし、壮絶な試合でした。翌日、負けた方の選手が入院していることを知りました。そして、彼は意識を取り戻すことはありませんでした。

 ショックを受けたわたしたちは、もう、ボクシングを見ようとは思わなくなり、観戦から遠ざかります。しかし、長い月日のあと、結局またもどって来ました。

 その間にいろいろと考えたことや気がついたことがありました。凄まじいハイキックで倒された選手が実はリング禍にあうことは少ないこと。コツコツと地味にパンチをもらった選手のほうが実はあぶないということ。重量級のパワフルパンチよりも軽量級の連打の方がこわいということ。軽いグローブよりも重いグローブのほうが危険だということ。

 そういったことをまとめて形にしたのがボクシングのリング禍を減少するための試案です。

 女子は男子よりもパワーが無いから女子ボクシングは安全だと言うひとがいますが、それはまったく間違いです。件数こそ少ないですが女子の事故はありますし海外では死亡例もあります。

 ボクシング禍の続いているときにはこのような話題は感傷的に扱われやすいので、幸運にも平和な日が続いているこの時期に書いてみました。

 昨年はキム・ジュヒ選手の試合がどう見ても続行不可能な異常な状況なのに無理矢理継続された危険な事例がありました。そのときの写真を通信社がベストフォトに選んで話題になったことは記憶に新しいと思いますが、日本の格闘技やボクシングの関係者までがその写真を興味本位で騒ぎ立て、冷静な批判をする人が少なかったことに危機を感じています。

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2010年02月23日

リング禍を本気で防ぐには

boxing


 昨年、二人の尊い命が失われた日本のリングで、本年もまた事故が起こってしまいました。

 今回の試合については知りませんし、言うべき立場でもありませんが、一般論として日本のボクシングの事故の発生頻度は異常です。これからもスポーツとして成り立っていけるのでしょうか?

 最近の事故の対策としてJBCさんが導入した「Dカード」は、現状のまえではあまりにも場当たり的。

 もっと抜本的な対策が必要なことは明らかです。それが何なのかはみんなで考えましょう。多くのひとの意見の中から何かが生まれるでしょう。

 QRはリング禍減少のための基本対策として「被弾数の定量制限」と「グローブの軽量化」などを提唱しています。

 リング禍を減少するための試案

 また、これは規定でどうこう出来るものではありませんが、過度な減量は危険であるという意識を一般化してもらいたいなと思います。

 海外のボクサーで試合ごとに8キロとか10キロとか減量している人の話はあまり聞きませんが、日本では当たり前のようになっています。計量まえの極端な断食や水抜き、計量後の急激な復食、これらがどれだけ体をこわすことなのか、真剣に考えられているのでしょうか?

 「練習中には水を飲むな」とか「ヘッドギアをつけていればガンガン打ち合っても安全」などという数十年前の迷信をいまだに信じている指導者たちがいる国ですから、減量の危険性を無視している場合も多いのではないでしょうか?
 
 また、事故後の関係者の人たちの言動も、どこまで事態の重さを理解しているか疑問に感じることが多々あります。

 身柄を預かっていた当事者としての反省や、事故の原因をさぐる様子もなく、直後から、不運だったというような見方や、キレイな言葉で飾って終わらせようとする人たち。

 人としてその態度はまずいんじゃないかという「論」ではなくて、実際問題として、そのような常識に欠ける態度のジムには入門しないほうが良いと思います。

 常識に問題がある人たちが適切な安全指導や安全管理が出来るとは考えられないからです。

 リングの安全について、これからも考えていきましょう。

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お悔やみ

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 八巻裕一選手のご訃報に接し、心から哀悼の意を表します。

   クイーン・オブ・ザ・リング

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2010年01月20日

猪かずみ 引退勧告はナンセンス

 Boxing

 猪かずみ選手(花形ジム)への引退勧告が話題になっているようです。

 しかし、本人に続行したい意志があり、肉体的コンディションには問題が無く、今日現在のランキングがWBC5位(自己最高順位)という世界的に好評価の選手が、どうして今すぐ引退をしなければならないのでしょうか?

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 それは事実上日本国内のボクシングを仕切っているJBCさんがボクサーの年齢制限を定めているからです。この規定によって、通常、37才になった選手は引退することになっています。

 しかし、世界の女子ボクシングの流れに押し流されるカタチで女子ボクシングをはじめたJBCさんは、女子の公認スタートの遅れによる深刻な女子選手不足という事情があるため、30代後半や40代の女子にも積極的にボクサーライセンスを公認してきました。

 また、37才引退規定は、男子であっても「元チャンピオンや実積がある選手は例外」とするものなので、元日本チャンピオンである猪選手にはライセンス継続の資格があり、現在まで年齢が問題になることはありませんでした。

 それが今回の引退勧告になったのは猪選手が昨年11月の試合で負けたためです。JBCさんの年齢規定のチャンピオン特例や女子特例は、その条件として「一度負けたら特例取り消し」という内規があるらしく、猪選手以外にも横関夏芽選手(緑ジム)が1敗を理由に引退勧告を受けています。

 しかし、きのうまでJBC公認プロボクサーだった選手がきょう1回負けたからという理由で、あしたからはボクサー資格を失うということにどういう意味があるのでしょう?勝ち負けが安全性と直結するわけでもありませんし、ずっと勝ち続けるスポーツなんかありません。勝ち負けがあるからこそ競技は成り立つのですし。

 女子が少ないから特例を認めます、チャンピオンには続けてほしいから特例を認めます、と引き込んでおいて一敗を理由に切り捨てるのは無責任すぎるでしょう。

WBC5位 猪かずみ 特に猪選手の場合は、本人には関係のない部分でいろいろな事情があって1年以上も試合間隔があいてしまったあとの1敗です。そんなにブランクがあってコンディションや試合カンを保てというのは無理です。

 試合間隔があいたのはWBC世界タイトル挑戦の予定が不可解な理由で流れたことが原因ですが、そのキャンセル騒ぎのときにJBCさんは猪選手を後押しする声明のひとつも出していません。

 一部報道と事実は違いWBC世界戦に年齢制限はありません。WBC会長も猪選手の世界挑戦に問題無しとの認識だったようです。そして、猪選手は技術・健康面のJBCさんの審査をすべてパスした公認のボクサーですから、あのときJBCさんがプッシュしてくれれば猪選手の世界挑戦は実現出来たでしょう。

 キャンセルは、WBCの意志でも決定でもありません。もともとチャンピオン陣営が猪選手を指名してきたのですから、実現には何の障壁もありませんでした。それが消えたのは、猪選手の世界挑戦を横取りしたい勢力の意志だったと思われます。

 まあ、過ぎたことの真相がどうにせよ、あのような状況のときにJBCさんがなんの援護もせず、頼りにならなかったのは事実で、日本のボクサーの味方ではないのかなと思いました。大事な時に応援はしなかったけれど切り捨てはするのですか?

 クルム伊達公子選手や岡崎朋美選手の活躍に人々が共感するのは、スポーツの大きなテーマのひとつ「年齢への挑戦」があるからです。JBCさんは全然わかっていないようですけど、猪かずみ選手にも世の中の人は強い関心を持っています。

 うちのブログの記事で一番アクセスを集めるのは、女子高生ボクサー黒木優子選手でもなく、WBC王者富樫直美選手でもなく、WBA王者多田悦子選手でもありません。圧倒的に猪かずみ選手です。これが現実なのです。日本の女子ボクシングは求心的な柱という意味でも、実力派世界ランカーという意味でも、この人を必要としています。

 しかし、続行にしても引退にしても、キーになるのはご本人の意思。わたしたちファンは身勝手ですし、JBCさんも身勝手ですから。ご本人のやりたいようにやればいいのです。勧告なんて余計なお世話ですよ。

猪かずみ

 それから、誤解している人が多くいるようですけど、JBCさんの引退勧告は「JBCさんからの」引退の意味でしかありません。また、猪選手は今までボクサーをやめるとは一度も言ってないと思います。

 というわけで、ボクサー猪かずみがんばれ!

 書くべきことはまだまだありますが、今日はこのへんにして、猪選手と同世代のアメリカ人女性(ボクシング元世界王者)の言葉をご紹介しましょう。
「ボクサーにとって大事なのは実年齢ではなくてボクサー年齢です。
 カズミ・イザキはまだデビューからは数年しかたっていないからボクサーとしては若い。
 わたし自身は今でも強いけど長い間戦ったので試合は引退しました。
 でも、カズミは引退の必要はない。まだ心に牙があるから。それが大事なことです。」

★40代プロボクサーひとことメモ
 女子では昨年WBCライトミドル級王座を41才のクリスティー・マーティン選手(アメリカ)が獲得。
 ミア・セント・ジョン選手(アメリカ)は41才でWBCライト級インター王座防衛戦に敗れましたが、今年3月には42才9ヶ月でWIBFライト級王者に挑戦することが決まっています。
 男子では47才のイベンダー・ホリフィールド選手が来月フランソワ・ボタ選手とWBFヘビー級タイトルを争います。

猪かずみ選手「まだ自分ではボクシングをやりたいし、できると思っている」(スポーツ報知)
46歳猪が引退「もう一度やりたい」(サンスポ)

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2009年10月27日

女子ボクシング JBCがわずか1敗の女子選手に引退勧告

boxing


 日本国内の規定では本来ライセンスが認められない年齢ながら(今年で37才)女子ボクシングスタート時の特例としてボクシングライセンスの発給を受けていた選手がデビュー2戦めに判定負けをしたことを理由に引退勧告を受け、リングを去ることになりました。

 引退するのは今年3月にデビューした横関夏芽選手(緑)。デビュー戦は勝利したものの、4月の試合で黒木優子選手(関)に判定負けを喫しました。

 JBCさんは女子ボクシング認可直後の人数確保のために、30代後半〜40代の選手にもライセンスを認めています。しかし、これはあくまでも便宜的な一時の処置で「一戦でも負けたら引退勧告が来る」と言われていました。

 しかし、いくらなんでも一試合程度負けたからといって機械的に線引きして「はい、引退勧告」とはならないだろう、少しは様子を見てから決めてくれるだろう、という見方もあったわけです。でも、現実はきびしく、1敗して引退勧告を受けた横関選手にこれ以上現役を続ける道はありませんでした。

 横関選手は12月14日の対花形冴美戦を最後にグローブを置くということです。

 同じように年齢規定を越えていて、1敗している選手は他にもいますが、今後、例外無く引退に追い込まれてしまうのでしょうか?

 ボクサーライセンスというのは「プロボクサーとして適格であることを認める」証明書です。それが一回の負けで取り消されるとは。よくわからない話です。

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2009年06月17日

女子ボクシングの世界タイトルマッチは何ラウンド?

boxing


 7月3日にラスベガスでおこなわれるレイラ・マッカーター選手と風神ライカ選手の世界タイトルマッチが、男子と同じ3分12ラウンド制であることがスポーツ紙で伝えられて、話題になっているようです。

 現在、多くの団体で女子ボクシングは1ラウンドが2分となっていますが、全部がそうというわけではありません。むかしから(数は少ないですが)女子でも1ラウンドが3分の試合はおこなわれていて、ブリジット・ライリーさんなども3分制の経験があるようです。

 2分よりも3分のほうがいいという考えをはっきり表明している現役選手は何人かいますが、その中の代表がレイラ・マッカーター選手です。彼女は「3分のラウンドの中で組み立てて行くのがボクシング」という考え方の人で、それを(彼女のホームである)ネバダ州のコミッションに認めさせています。

 団体としてはWBAとGBUが女子の3分制を認めていますので、ネバダ州ラスベガスでおこなわれるレイラ・マッカーター選手のWBAまたはGBUのタイトルマッチは、当然のように3分でおこなわれています。ノンタイトルも例外なく3分です。

 もちろん、マッカーター選手は2分制を拒否しているわけではないので、相手のホームで戦う時は2分でやります。地元のタイトルマッチでは3分制はゆずりませんが、12ラウンドではなくて10ラウンドや8ラウンドでやることもあります。

 2分よりも3分のほうがいいと考える選手は、マッカーター選手と基本的に同じ意見で「3分あれば相手を倒すボクシングが出来る」という点で一致しています。「2分は短いわ。あと20秒あったら相手を倒せるのに」と言ってるのはアメリカのエレナ・リード選手。アルゼンチンのジェシカ・ボップ選手も「相手をグロッギーにして、さあフィニッシュというところでゴングが鳴るのよ」と2分制に不満顔。ミア・セント・ジョン選手(アメリカ)は「3分12ラウンドでも15ラウンドでもいいわよ」と積極的。

 一般に、女子が2分制なのは安全面を考慮してと思われがちですが、2分のほうが医学的に安全だというなら、より激しいパンチを打ち合う男子がまずそうすべきで、女子だけと言うのはおかしい話です。

 女子の2分制の本当の理由を「(男子の前座の)女子を早く終わらせるため」と指摘する人もいますし、ラウンドが少ないのも「ラウンドが少ないと支払うファイトマネーが安くなるため」という理由だとも言われています(海外の話です)。

 ここでは、2分制がいいのか3分がいいのかという議論をする気はありません。ただ、女子は2分制という固定した価値観ではなくて、世界には考え方もルールもいろいろあるということだけご紹介したかったのです。

 ちなみに、現在、おこなわれている女子の世界タイトル戦はほとんどが2分10ラウンドですが、WBAでは2分9ラウンド、2分10ラウンド、3分12ラウンドの3種類、GBUが2分10ラウンド、3分8ラウンド、3分10ラウンド、3分12ラウンドの4種類があります。

 という記事をアップした直後に、レイラ・マッカーター選手と風神ライカ選手の試合が、2分10ラウンド制に変更になったと発表がありました。

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2009年04月02日

ボクシングのリング禍を減少するための試案(改訂版)

 QRは、タイトル下に掲げた「甘い声には耳を貸さない」という文章で、「リングは、とてつもなく危険なところです。」と明記してきました。危険を回避出来る適性、危険とかかわる覚悟、そういう条件を満たせる人以外は格闘技のリングには立てません。どんなに懸命に危険を回避しようとしても、格闘技である限りは安全の保証は不可能なのですから。

 リングが危険な場所であるからには、そこで起こる深刻な事故、一般にリング禍と言われる事故をどうやって防ぐかということは、その格闘技が存在するために、一番真剣に考えられるべきことです。ここではボクシングやキックボクシングなどの、いわゆる打撃系格闘技に関して考えてみましょう。

 打撃によるリング禍の特徴は次のようなものだと言われています。
1.キックボクシングよりもボクシングに多い。
2.重量級よりは軽量級に多い。
3.四回戦よりは十回戦、十二回戦に多い。

 1.について考えてみましょう。
キックボクシングは、ボクシングと違って相手の全身を攻撃しますが、最終的には、頭部への打撃で決まる試合が圧倒的に多いのはご存知のとおりです。
キックボクサーにもハードパンチャーは多くいますし、頭部へのハイキックによる強烈なKOシーンも多く見られます。けれど、それがそのままリング禍につながることは少ないのです。なぜでしょうか。
それは、キックボクシングの場合は、連打で相手の顔面を攻撃し続ける場面が少ないからだと考えられます。
最終的にはどんなに強烈なKOシーンがあっても、それに至る過程では、ローやミドルやヒザ蹴りなどのコンビネーションが必要なため、攻撃が全身に分散し、頭部への連続加撃は結果として少なくなります。これがキックボクシングでのリング禍が少ないことの理由だと思われます。
逆に言えば、ボクシングでリング禍が多いのは、頭部への打撃の連続性、あるいは、頻度が原因と考えられます。

 2.から考えられるのも1.とほぼ同じです。
重量級に比べて動きの速い軽量級では、明らかに攻撃の手数が多くなります。打撃は連続し、頻度も上昇します。

 3.から考えられるのも1.2.と矛盾しません。
事故は試合の早い回ではあまりおこらないで、後半の回、あるいは長い試合を全部終えたあとに起こっています。
これも、受けた打撃の多さがリング禍に直結するということを示しています。

 上記三点からの結論は、打撃そのものの強烈さよりも、打撃の連続性あるいは頻度に注目して対策をとることが、リング禍の防止につながるということです。

 以上からボクシングにおけるリング禍の防止方法を考えてみました。
A.【試合中の被弾数をルールで制限する】
一番良い改善策は、一試合あたりに受けるパンチを「最大限何発まで」と定量規定をもうけることだと思います。
パンチの被弾数をラウンドごとに集計し、これを超えることがあればそのときに試合は停止され、そのラウンドまでの判定とします。
ようするに、どちらかの選手が規定以上に打たれた時に「負傷判定同等扱い」とするわけです。
(テレビのボクシング中継には、ラウンドごとに両選手の手数とヒット数を公開しているもありますので、被弾数のリアルタイムでの計測と集計の導入には、技術的困難は無いものと思われます。)
定量はクラスや階級にかかわらず一律で何発と決めます。
四回戦や六回戦にはあまり影響が出ないで、八回以上の乱打戦から適応されるような定量規定を設定すれば、リング禍は減少すると思います。
ルールをいじることにはなりますが、攻撃技術の優れた選手、防御の優れた選手に有利になるルールなので、ボクシングの攻撃と防御の基本理念にマッチした改訂だと思います。
現行ではいくら打ち込まれていても、時折反撃すればレフリーストップにならないため、ストップのタイミングに間違いが生じることが多くあります。
定量規制すれば時折打ち返していても関係なく停止可能となり、打たれ過ぎの選手の安全を確保出来ます。
これを日本国内でのローカルルールとして提案いたします。

B.【試合環境を再検討1】
ルール面の見直し以外に、試合環境の物理面にも、再検討が必要かもしれません。ボクシングの試合環境と言えばまずグローブとリングです。
ここしばらくの間、日本製の公式試合用グローブは、メキシコなどのメーカーのものよりもナックル部が厚い独自のものでした。
ナックル部が厚いと打撃が脳に浸透しやすいという指摘がありましたが、現在では規定が改訂されて海外品と同等程度にナックル部が薄い国産グローブになりました。
しかし、新型グローブになってもリング禍の発生は抑えられていません。
グローブの厚みを変えてもだめなら重さはどうでしょうか。
昭和期全般や平成の初期(つまり90年代前半まで)は、現行のものより各階級で2オンス軽いグローブが普通に使用されていました。
その当時のリング禍の発生頻度は、現行の重いグローブになってからより低かったという指摘があります。
よって、グローブの重さを当時の規定に戻すことも有効だと考えます。

C.【試合環境を再検討2】
グローブの次はリングも考えてみましょう。
リングの広さの規定は一辺が5.47メートルから7.31メートルまでと決められています。
その範囲の中なら、公式規定はクリアしていますが、リング禍が何度も起きている後楽園ホールのボクシングリングは、規定最低限ギリギリの一辺が5.5メートルほどです。
これは国内の他会場のものと比べてもかなり小さいです。
これを一辺6.5メートル程度にします。
一辺を1メートル拡大するだけで面積は約30平方メートルから42平方メートルとなり、面積比で1.4倍です。
これだけ広ければ当然それだけ足を使うことになり、容易に接近戦にはならず、ロープやコーナーに詰められる展開は減少するでしょう。
つまり、被弾数が減ります。

JBC認可以前の日本の女子ボクシングは非常に狭いリングを使っていました。現在の後楽園のものより面積比で半分程度です。
八島有美選手はそのリングでも相手のパンチをよくさばける人でした。
しかし、タイトル防衛戦で柴田早千予選手に対した時はそれが出来ず、打たれまくって試合後に倒れるリング禍となり現役を引退しました。
ラウンドが2分のルールなので男子に比べて安全と言われる女子の試合でも、狭いリングではこのような事故が起きているのです。
リングは広いほうが良いでしょう。

 以上に述べました「被弾数の定量規定」「グローブを軽くする」「リングを広くする」の三点を、ボクシングのリング禍を減少するためのQRからの試案といたします。

queensofthering at 13:00|PermalinkComments(3)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote

2009年03月25日

お悔やみ

辻昌建選手のご訃報に接し、心から哀悼の意を表します。

クイーン・オブ・ザ・リング



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queensofthering at 22:30|PermalinkComments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote