2018年02月04日

2大スタジアム以外の見るべきムエタイはこれ! または ムエタイのテレビ中継はどうして外国人観客ばかりを写すのか? 一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その38

 MuayThai

 今回は女子ムエタイを離れて、ムエタイ観戦全般の基礎知識を書いてみます。といっても、QRはムエタイの専門家ではなく、立ち技全般のファンなので、基本の基本みたいな部分しか書けません。でも、マニアの人じゃなければこれで十分でしょう。

Jan-7-2018タイ7チャンネル 1月7日 画面クリックで動画のページに飛びます(最初に15秒ほどのCMあり)

 ご存知のようにムエタイではルンピニーラチャダムヌーン(ラジャダムナン)の2大スタジアムが聖地というか最高峰ということになっていますが、実は2大スタジアムならなんでもスゴイ試合なのかと言えばそうではなく、曜日によってそのレベルがまるで違います。

 ルンピニーは火曜、金曜、土曜、ラチャダムヌーンは月曜、水曜、木曜、日曜が試合日ですが、ルンピニーの土曜日、ラチャダムヌーンの日曜日は企画ものとか新人戦の日で、実は全然レベルは高くはありません。

 お客さんもガラガラで、地元のファンはほとんどいません。いつもは超強気で値引き交渉なんか受け付けてくれないチケット係のお兄さん、お姉さんたちが自分から「値引きするからチケット買ってください」というくらいです。

 時々、日本人が2大スタジアムに遠征して勝ったことが報道されたりしますが、日にちを確認すると土曜や日曜のことが多く、ガッカリしてしまいます。以前、土曜日のルンピニーで日本人がKO勝ちした試合を見たことがありますが、「そりゃあ、勝てるよね」といった相手でした・・。全部が全部とはいいませんが、土曜や日曜の2大スタジアムの「日本人勝利!」には要注意だと思います。

 では、土・日のムエタイは大したことがないのかと言えばそうではなく、その日は、別のスタジアムの試合が盛り上がっているのです。

 土曜はオムノーイスタジアム、日曜はチャンネル7スタジアムでムエタイファン注目の大会が開催され、それぞれタイの3チャンネルと7チャンネルで全国生放送されています。

 タイでは、2大スタジアムに、このオムノーイとチャンネル7を加えて、4大スタジアム、4大殿堂という言い方もされているようです。

 オムノーイはあのブアカーオ選手がK1で有名になる前にチャンピオンだったスタジアムで、土曜の昼過ぎくらいから試合開始、チャンネル7スタジアムはスタジアムとは名ばかりで、実はテレビ局の単なるスタジオ。こちらは日曜日の午後2時ぐらいからの試合です。

 上に貼った動画はチャンネル7の1月7日の大会。ラウンドとラウンドの間にやたらと客席の外人さんを写していますが、これはなぜかというとタイ人のお客さんを写すと高い確率で賭けをしているからです。

 ムエタイの賭けは合法と思われていますが、法律で認められているギャンブルは競馬だけで、賭けムエタイは警察の認可を受ければOKという柔軟運営でおこなわれているもの。というわけで、賭けている人をテレビで堂々とは写さず、7チャンネルではメインのカメラから見て正面の席は「外国人席」と指定して、インターバル中はなるべくそのあたりを写すようにしているのです。

 ギャンブルが非合法の日本でパチンコ屋さんが堂々と営業しているのと同じで、スタジアムにも「賭けは違法です」「賭けないでください」という表示が出ていますが、だれもそんなこと、気にしていません。

 もともとは、仲間の試合のときに、その選手の勝利を信じる証としてお互いの身内同士がお金を賭けたという文化的な歴史背景があるので、ムエタイの賭けを一概に悪ということは出来ません。

 また、選手にとっても、賭けに勝った人たちからご祝儀として贈られる現金は良い収入源で、これがなくなるとムエタイのプロはかなり苦しくなるとも言われています。

 賭けは、赤コーナーが勝つか青コーナーが勝つかを予想する単純なものですが、面白いのは、ひとりのひとが一試合に何人もの違う相手と違う内容の賭けをすることができるということです。

 つまり、あなたが試合前に青の選手に100バーツ賭けたとして、最初のラウンドを見てみたら、どうも青は勝てそうにない、赤に賭ければ良かったな、となったとします。

 この場合はただ見ていると負けを待つ確率が高いので、勝ちたい人はインターバルの間に別の相手を見つけて赤に例えば200バーツを賭けます。

 すると、赤が勝った場合は最初に青に賭けた100バーツは取られますが、赤の勝ちで200バーツが入るので、差し引き100バーツのプラスになります。
3チャンネル オムノーイスタジアム 12月16日 客席を暗くしていますが口元を隠して賭けの話をする人、手を上げて賭けの相手を探す人が写り込んでいます

 欧米のボクシングの賭けの多くは、結果を予想して試合の前に賭けるだけですが、ムエタイではこうやって試合中にも最後の最後まで、負けそうな賭けをプラスに、少しプラスになりそうな賭けを大きなプラスにするために、賭けは動いているのです。

 このような賭けの相手探しや金額の交渉などが試合中ずっとおこなわれるのですが、特にラウンドのインターバルの客席は大変な騒ぎです。

 これが5ラウンドまで繰り返されます。そして、試合が終わった直後から次の試合のワイクルーがおこなわれている間ぐらいは、客席では勝った人、負けた人の間でバーツ紙幣が飛び交うので、とてもテレビには写せないのです。

 また、このように、インターバルごと、ラウンドごとに賭けが進展するシステムであるため、試合が1〜2ラウンドぐらいで早く終わってしまうと賭ける人も、賭け金も少なく、賭けが盛り上がりません。

 そうなると試合後に選手に贈られるご祝儀も少なくなってしまいます。そのため、賭けをしているお客さんにとっても、選手にとっても、試合はすぐに決着がつかずに最後までもつれ込む方がおいしい、ということになります。

 特にルンピニーやラチャダムヌーンでは賭け目的のお客さんが多いので、優勢、劣勢の判断がすぐにつかないような試合をきっちり5ラウンドまでする選手がよろこばれます。このため、判定が多くなり、「ムエタイは地味だ」などと言われるのです。

 しかし、7チャンネルなどの人気テレビマッチでは「派手な勝ち方をして全国放送で目立って有名になりたい」と考える選手もいるので、KOによる早期決着戦もけっこうあります。

 もちろん、5ラウンドきっちり戦う選手もいて、じっくり試合を楽しむことも出来ます。そのバランスがなかなか絶妙に保たれているので「7チャンネルが一番面白い」というファンも多いのです。

 日本ではスポーツに賭ける習慣がないのでいろいろ誤解が多いようですが、賭けが広く行われている競技では八百長や不正はまずありません。不正をしてバレたら次の日から誰も見なくなってしまいますから。

 また、事前の予想や会場人気で判定が変わるということもありません。賭けは赤、青それぞれに賭ける人がいてはじめて成り立つので、事前や試合中に結果が分かるのではギャンブルにはなりません。ですから、予想や会場人気では判定は決定しません。

 実際、ムエタイで会場人気を裏切る判定が出た試合をなんどか現地で見たことがありますが、客席が一瞬どんよりとした空気にはなりますが、当然ながら判定が変更になることもなく、ジャッジの判断はそのまま尊重されます。そうじゃなければ競技は成り立ちません。

 一度に何頭も走る競馬と違って、赤か青のどちらかが勝つだけの単純なゲームですから、多くの場合は予想通りの結果になりますが、それは単に予想が当たっただけの話です。予想のとおりに結果が作られてるわけではないのです。

 ムエタイはこのような、試合と同時進行する賭けのシステムなので、ギャンブラーのみなさんに一番好まれるのは「そうは見えないけど実は強い選手」そして「後半まで実力を見せない選手」です。

 その選手が強いのを知っているギャンブラーのみなさんはその選手に賭けますが、強そうに見えないので普通の人は相手のほうに賭けてしまいます。そして試合前半は実力を見せないので「この選手弱いな」と思った普通の人がどんどん相手方に賭けていき、そして・・後半に大逆転で強そうに見えない選手が勝利。その選手のことをよく知っているギャンブラーの皆さんは大儲け、というわけです。

 しかし、その選手が強いのがバレてしまったら、相手方に賭けるひとはもういません。そうなると、賭けが成立しないので、人気がなくなり、主催者さんの方でも試合を組みづらくなってしまいます。強すぎてスタジアムに出られなくなった、という選手の話を時々聞くのはそういうわけです。

 しかし、ムエタイファンがすべて賭けの対象として試合を見ているわけではなく、強さや派手さがダイレクトに伝わる試合を求める人も多いので、そのような需要に応えるためにあるのが、例えば『タイファイト』『マックスムエタイ』などのリングです。

 ここでは強さに定評のある選手たちが、主に外人選手を相手に戦います。これはタイのファンの愛国心、自尊心に訴えかけるものがありますし、純粋に強さを求めるファンにも支持されてテレビの人気コンテンツになっています。

 しかし、派手な勝ち方、見た目のインパクトを求めるあまり、側転しながらキックを出したり、酔拳のように瞬間的に倒立して下から顎を蹴り上げたりというアクロバチックな技に走る選手も出てきて「ショー」の要素が強すぎると批判される流れも出て来ています。

 まあ、しかし、伝統的なリングもあるし、革新的なリングもあるタイのムエタイ事情は、見る者にとってはとても魅力的だと言えるのではないでしょうか。

 いまは動画でいろいろ検索して見ることも出来る時代になりましたので、キーワードを入れて探してみてください。あなたの好みのリングが見つかりますように。

ルンピニー สนามมวยเวทีลุมพินี
ラチャダムヌーン เวทีมวยราชดำเนิน
チャンネル7 มวยไทย 7
チャンネル3 オムノーイ ศึกจ้าวมวยไทย ช่อง3
タイファイト THAI FIGHT
マックスムエタイ MAX MUAY THAI

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queensofthering at 14:25│Comments(1)一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら │ このBlogのトップへ前の記事次の記事

この記事へのコメント

1. Posted by Queens of the Ring   2018年02月05日 07:01
ムエタイの賭けは合法かどうかという部分をより正確に書き直しました。
タイの公認のギャンブルはバンコクでおこなわれている西洋式の競馬だけなのですが、ムエタイの賭けも警察の認可があれば良しとされる柔軟運営のもと、広く普通におこなわれています。

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