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敗者の弁を考える 記者は「地元判定」などと簡単に書いてはいけない

 Boxing

 この件については以前も書いたのですが、試合で負けた選手というのは大変なショックを受けています。ですから、自分の精神状態を救うためなら色んなことを言います。

 有名な「キンシャサの奇跡」でモハメド・アリ選手に負けたジョージ・フォアマン選手は「負けたのはロープがゆるかったから」と言いました。アリ選手の奇策「ロープ・ア・ドープ」はロープがゆるかったから出来ただけで、普通だったらそのようなことは出来ず、自分が勝ったという意味です。

 また、ダウンして起き上がろうとしたら「まだ立つな」という指示がコーナーから出て、それで少し遅く立ったらKO負けにされた、とも語ってました。

 後年、フォアマン選手は「自分のプライドを支えるためにはああでも言うしかなかった。自分を支えるためにはなんのせいにだってしたさ。」と語っています。

 ロープのせいにしたり、セコンドのせいにしたりして、自分の精神を支えるわけです。どんなに強いボクサーだって人間ですから、そういうことも必要なのでしょう。

 だから、負けた直後の選手の発言は、そのまま聞いてはダメなんです。負けた直後の声は本当の気持ちとは同じとは限らないんです。

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写真素材 足成
 先日、多田悦子選手がスプリットで負けて「自分が勝ったと思った」「地元判定だと思う」「相手が挑戦者なのに前に出てこなかった」と語ったとされています。本当にそんなことを言ったのかどうかはわかりませんが、言ったとしても本心とは限りません。

 所属の真正ジムの会長は「アウエーとは言え、酷すぎる判定です」とブログで書きました。普通に考えれば会長ブログも身内をかばうため、なのでしょう。

 会長も多田選手も実際はわかっているでしょう。両者ノーダウン、両者決定的なラウンド無し、そんな試合でしたから、あの判定は仕方ありません。

 けれど、スポーツマスコミはそういう風には書きません。いつも選手や身内の言い分をただ垂れ流すだけです。その「言い分」もしつこく誘導質問の結果引き出したものかもしれず(言い訳はしない、と言いながら言い訳するのは不自然ですからね)、どこまで信じていいかあやしいものです。

 少なくても客観報道ではありません。向こう陣営や、中立者の意見や、記者自身の意見すら無いのですから。

 だいたいですね、「地元判定」があるようなことを、スポーツ記者が平然と書いたらダメでしょう。

 「スポーツはインチキ」と言っているのと同じなんですから。

 マスコミが本当に「地元判定」だと思うなら、それを追求するべきです。「ひどい判定」だとしたらジャッジの身元や出身国、判定履歴などを報道するべきでしょう。インチキ判定の根拠もないのに、インチキであるかのような報道をするのはおかしいし、そのスポーツへの侮辱、ネガティブキャンペーンです

 このような報道の結果、一般のひとの間に勝手な妄想が広がっていきます。
「ボクシングってちゃんと判定されないんだ」
「外国に行ったら外国人が勝つんだ」
「酷い判定をしたジャッジはきっと中立国じゃないのだろう」
「買収されているに違いないんだ」

 こんな妄想が広がったらボクシングのイメージダウンです。もともと人気がないのにもっと人気がなくなるでしょう。

 おかしい判定だと思うときは、その根拠、説明を書くべきで、そのようなことを一切書かず、負けて冷静じゃない関係者が口走ったことをそのまま書いたら、ボクシングにいいことは一つもありません。

 マスコミはそのことを考えるべきです。とくに、ボクシングでご飯を食べているライターさんは。

 今回の試合を冷静に見直してみましょう。

 まず、第1ラウンドにカイ・ゾンジュ選手は故意に肩からぶつかってきました。反則のショルダーアタックです。多田選手が前に出てきたので、肩を使って距離を取ろうとしたわけです。カイ選手は接近戦が苦手ですから。

 2 、3回繰り返しましたから明らかに故意です。そして、多田選手をリングに押し倒しました。ここまでやるのは、わざと怒らせるためかもしれません。怒って前に出てくるのをカウンターで待つ作戦なのでしょう。

 実際、このあと、カイ選手は完全に引いて逃げ回りました。そして、多田選手はそのあとを追いかけ、追いつけないまま10ラウンドが終わりました。

 相手が出てこないのは第1ラウンドでわかりました。カウンターと打ち終わりだけを狙われている状態で、こっちから出て行っては不利です。

 相手は挑戦者なのだからドローではダメ。でも、こっちは王者なのだからドローでも防衛です。

 こっちが出る必要は無いのに出た。そして判定は1-2と割れての負け。

 このときのジャッジの点差が大きく開いていたのを会長は不審点として指摘しました。カイ選手を支持した2名のジャッジはカイ選手に98点。その98点がヘンだというのなら、多田選手支持のジャッジがつけた98点はどうでしょう?同じ条件でのジャッジに疑問を投げかければそれは自分にも跳ね返ります。

 すでに別稿で書いたように、現行のジャッジシステムでは盛り上がりの無いドロー試合の点差が拡散するのは防げず、両者の点差は現象としてはおかしくないことです。

 ジャッジの基準は有効打なので、相手の出てくるのを待ってパンチを当てればポイントは上がり続けます。相手を圧倒する必要はありません。感覚的に納得できないかもしれませんが、それは地元判定とは別の話です。

 下がりながら打つパンチよりも出ながらのパンチを有効と見るジャッジは日本や韓国では珍しくありませんが、世界的には少数派です。

 今回は、現状の多数派の見方をするジャッジが2名、少数派のジャッジが1名いて、それぞれがそれぞれの見方をブレないで10ラウンド続けた結果あの数字となったのでしょう。

 それが、点差の大きいスプリットの正体です。

 ジャッジの出身国はアメリカ2名、アルゼンチン1名。3人ともいつもは本国でジャッジやレフリーをしている人たちで特にマカオや中国には関係ありません

 アメリカとアルゼンチンは親中と言われますが、親日とも言われる国です。

 そして、カイ選手を支持したのはアメリカ1名、アルゼンチン1名。多田選手支持はアメリカ1名。これで「地元判定」が疑えるんでしょうか?

 それでもヘンだと言いたい人は理由を説明するべきです。

 当ブログは、多田選手が前に出たことが相手を有利にしたと思いますし、出ないボクシングを出来れば防衛の可能性は高かったと思います。出た場合は「詰めて山場を作る」ことを条件に、勝てたでしょう。

 もちろん海外でやるのは日本でやるよりは不利ですが、多田選手はこれまでなんどもWBAの王座を自国開催で防衛しているのですから、それは言いっこなしですね。

 それだけのことだと思います。

 それでも「不正だ」という人は、見ないほうがいいです。

 プロスポーツの勝敗には僅少の優劣が評価されたり無視されたりというような、ある程度の不合理は付きもの。その中で常勝選手となるには、それを乗り越える実力、プラスアルファが必要です。難しいことですけどね。

 今後に残す話としては
「試合に山場を作れなければポイントは流れる」
「前に出ればポイントになるという日本式の思い込みは捨てる」
「カウンターに対処できなければ世界では戦えない」
だと思います。

 マスコミが覚えておくべきなのは「敗者の弁」で注目を引く記事の作り方はみんなの首を絞めるということです。

 ボクシングに不正や地元判定があるのは本当でしょう。でも、いつでもそうなのではありません。大部分はまともに運営されています。

 負ければ全部「不正」ですませるメンタルでは、いつまでも勝てません。人気も下がります。

 勝つ方法を考えましょう。勝てる選手を育成しましょう。ボクシングを盛り上げるには、それしか無いのです。

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