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BoxRecはどうしてイマイチ信用できないのか? 一般の格闘技ファンのための100の大事なことがら その29

 ボクシングというのは世界的なスポーツです。日本の選手が外国に試合に行ったり、外国の選手が来日したりというのは当然たくさんおこなわれています。

 その時に必要なのが外国人選手の戦績などの個人データなのですが、実は全世界のボクシング選手の公式な資料を一括して管理している公的な組織とかデータベースというのはどこにも存在しません

 だから、たとえばJBCさんは試合の主催者さんに「外人選手の戦績を相手国のコミッションの確認付きで提出してください」というお願いをしています。データがないので、相手国からの情報にたよるしかないのです。

 でも、ちゃんと選手の戦績管理ができているコミッションなんてそれほど存在しないので、たとえば、アジア諸国からの来日選手の戦績の多くはマユツバと思って間違いありません。

boxrec 世界中のボクサーの戦績を集めたサイトとしてはBoxRec(ボックスレック、ボクレコ)が有名ですが、これはもともとはある人が始めた個人サイト(広告収入で運営)で、本来は非公式なものでしたが、ことし(2016年)にやっとABCというアメリカ/カナダのボクシングコミッションから公認データベースとして認められました。

 で、このABCオフィシャルとなったBoxRecは、公認以降は北米のボクシング大会の結果に関しては生の公式記録が提供されるから完璧になるでしょうけれども、それ以外の地域の試合に関しては現地の協力者によって集められたデータを収集しているのにすぎないため、信用性はかなり低くなります。

 BoxRecには世界のおもな地域に編集者(エディター)と呼ばれるボランティア(無報酬かどうかは不明)がいて、その人が自分の担当地域の大会結果をサイトに掲載していく仕組みです。けれども、編集者が存在しない国も多く、それらの国のデータは不完全だったり間違っていたりします。

 たとえば、日本担当の有名な編集者にジョー小泉さんがいますが、日本でおこなわれた試合であってもJBC管轄で無いものは彼らが関知しないためBoxRecには掲載されなかったり、不完全な内容になったりしています。

 JBC認可以前の女子ボクシングとか、JBCを離脱したボクサーによる自主興行などの記載は、不備だったり、全然記載がなかったりするのはそういう事情です。編集者の立場や考え方によってデータが偏ることは避けられないのです。これがBoxRecの限界なのです。

 BoxRecはWiki形式と呼ばれる仕組みを採用したサイトなのですが、Wikipediaとは違って誰でもが書き込めるものではありません。実際に書き込みなどの作業ができるのは編集者(エディター)だけです。

 もしも、わたしたち一般のファンがBoxRecの内容に間違いや不足を発見した場合はどうすればいいでしょうか?まずBoxRecの登録ページでIDを作ります。無料で誰でもつくれます。そのIDでログインすると、BoxRecのフォーラムに入ることができます。そこで、この記事のここのところが間違っているよとか、この試合が抜けてますよとか書き込めば2.3日中に記事に反映されます。

 QRもIDは持っているのでこれは何度かやったことがあります。試合結果を証明する資料を示せとかは一度も言われたことがありません。フォーラムを読んだ編集者の誰かが、けっこう簡単に書き換えてくれます。

 「そんなんでいいの?」と思う人もいるでしょうけれど、このくらいの軽さがないとここまで大きなデータを蓄積することは出来なかったと思います。これがみんなでネタを持ち寄って作るWiki形式のいいところなのでしょう。

 で、このフォーラムでの情報提供みたいなことを何度もやっていると運営者さんから存在を覚えてもらうことができます。そして貢献をかさねて信用され、住んでいる地域が編集者の不足している地域だったりした場合は、ここで運営者さんから「編集者にならない?」とオファーが来るらしいです。

 普通のひとはそんな面倒くさい仕事はやりたくないでしょうけれど、ボクシング方面で顔を売りたいとか、恩を売りたいとか考える人には、なかなか美味しいポジションなのかもしれません。だって、世界最大のボクシングサイトでボクサーの戦績を「編集」出来るわけですからね。

 実際、編集者がその立場を悪用したと思われる現象はいくつか確認できます。例えば、スティファニー・ダブスというアメリカの女子ボクサーは早千代選手と2回戦って2回ともTKOで負け、BoxRecでもそう記載されていたのですが、いまのBoxRecでは2戦ともNC(ノーコンテスト、無効試合)となっています。KO負けがふたつ減ったので、通算戦績が本来の1つ負け越しから1つ勝ち越しに変わりました。誰かが書き換えてくれたのでしょう(日本版Wikipediaは早千代選手、ダブス選手の両方のページでこの間違った戦績をそのまま掲載中)。

 また、韓国のチェ・ヒョンミ選手は2008年6月26日に中国でデビューしたことになっていて、KBC(韓国ボクシングコミッション)の資料でも、BoxRecでもそうなっていたのですが、実はそれがまったくのウソで、そのような試合は行われていなかったことが3年後に明らかになり、現在のBoxRecではその記録は削除されています。

 これはチェ・ヒョンミ選手を世界タイトルマッチに挑戦させるための「実績」が必要だった関係者の何者かが「中国でのデビュー戦でPABAフェザー級ジュニア王座を獲得」という戦績を捏造し、KBCの資料とBoxRecに書き込んでいたということが分かっています。そんなことが出来る「何者か」は当然、韓国ボクシング界のトップでしょう。

 状況から考えて、チェ・ヒョンミ選手の試合だけが捏造だったのではなく、2008年6月26日の中国での大会自体が「無かった」というのが真相だと思われますが、BoxRecではチェ・ヒョンミ選手の試合以外の3試合はいまでもそのまま掲載されています。全選手がデビュー戦で、全選手がそれ以降まったく試合をしていないという非常に不自然なデータのままで。

 このように、BoxRecの編集者になればいろんなことが出来てしまいます。負けを無しにできるし、無かった大会も作れちゃいます。しかも、編集者になるには厳格な規定はなく、フォーラムでいろいろ情報提供をしてBoxRecに貢献すればいいのです。試合結果だけではなくて写真も送ったりしたら貢献度も高いかもしれません。

 ある日、QRがBoxRecを見ていると、そこにはQRが記事に使った写真が貼ってあります。うちからのコピーなんですが、それが半端な数じゃないんですよ。数十枚はありました。投稿者のユーザーネームが2種類あったので、投稿者はふたり。どちらもどうやら南米の人。日本の試合写真なんて持ってるわけがないのに、自分のもののようなフリをしてせっせとBoxRecに送っていたようです。たくさん「貢献」して編集者になりたかったんでしょうね。

 QRはWikipediaさんに記事をパクられた事件を思い出し「またですか」とあきれながらBoxRecに削除依頼のタグを貼りました。やっぱりWiki形式のサイトというのは、そのなかで上に行きたい、力を持ちたい、利権が欲しいと思う人が、貢献度かせぎのためにこういうことをやるのでしょう。世界中どこでも。

 しかし、タグを貼ってもまったく反応がありません。そこで考えを変え、写真をアップした二人をフォーラムで指名して「勝手にアップした写真を消してください」と書くと、すぐにメールが来ました。「友人よ、どうか写真の消し方を教えてくれないか?」問題起こしたら編集者になれない、って焦ってるんでしょうけど、ひとことの謝罪もないんですよ。ずいぶん自分勝手な友人です。消し方を聞く相手も間違ってるでしょう。

 2、3日してBoxRecのアタマのひとからメールが来ました。「きみに編集権を与えたのでこれで写真は消せます」と書いてあります。「まじ?」と思ってログインすると、たしかに操作のところに「削除」の項目が増えてるではありませんか。本格的な編集はもちろんできませんが、限定的な削除ならできるのです。

 「なんで被害者自身が他人が勝手にアップした写真を探し出して1ページずつ(写真1枚ではなくページ丸ごと削除する仕様)削除しなければならんのだろう」と思いながら、コツコツと消しました。いまでも少し消し残しがありますけど。もうめんどうなので(苦笑)。

 この一件から以降、写真には「Queens of the Ring.com」の透かしを入れるようになったんです。入れるの嫌なんですけど仕方ないです。

 以上のように、BoxRecってかなりアバウトで、無責任で、それだから悪い人たちに利用されたりもしているわけですが、現状でこれ以上マシなシステムもありませんので、それなりの使い方をするしかないでしょう。これがBoxRecの編集者さんたちです。編集者がたくさんいる国のデータはある程度は信用できますが、少ないところのはそれなりと思ってください。

 でもね、新聞や雑誌やテレビのニュースなんかもっとインチキですから。それよりは信じてもいいと思いますよ(笑)。

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