観客席視点からの立ち技系女子格闘技
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女子選手に特別扱いはいらない たいへん有意義だった高野人母美第2戦でのヤジ ボクシング女子

「選手ならびに試合役員に対する誹謗中傷はご遠慮ください」ボクシングの会場で毎回ながれるアナウンスです。要するに、お客はヤジらないで黙って見てろ、ということですが、QRは適切なヤジなら大いに結構だと思うんです。

 かつては文科省の間接的な管轄下にあったボクシングも、いまでは一般財団法人(公益性が無くてもいい団体)のJBCさんが管理する一興行にすぎません。つまり、ほかの格闘技団体と基本的な性格は同じ。普通の格闘技興行なのです。

 どんな格闘技であってもプロを名乗るならお客さんを楽しませる義務があるわけで、それが出来なければ「カネ返せ」「二度と来るか、バカヤロウ」ぐらい言われても仕方ありません。ボクシングも同じことです。おカネをとってるんだから当然でしょう。

高野人母美選手
 で、永い間「誹謗中傷はご遠慮ください」と言われ続けて来た結果なのか、お客の年齢層が高くなってしまったからなのか、ボクシングのヤジって減りましたね。でも、ときどきは良いヤジも聞きます。去年いちばん良かったのは高野人母美選手第2戦のときのヤジでした。ヤジられて高野選手はその後いい方向に向っています。

 日本のボクシング界って、異様に女子を特別扱いします。デビュー戦から一人一人個別に入場させて、スポットライト当てて、選手希望の入場音楽を鳴らして、試合後には勝利者インタビューまでやるんですね。

 チヤホヤしすぎ。

 この件に関しては以前も言いましたが、4回戦では赤青一緒に入場でいいでしょう。入場テーマ曲やスポットライトなんか100年早いです。試合後はインタビューなんかしないで退場させてとっとと次の試合に進むべきなんです。ダラダラ、ノロノロの女子ボクシング興行は見ていてほんとにみっともないです。

Takano_vs_Yokkhao4
 最初からチヤホヤしてたら選手は次へのモチベーションを失います。入場テーマ曲が欲しいんなら努力して6回戦に昇格するべきだし、インタビューしてほしいんなら8回戦・10回戦に上がればいいんです。

 その意味で、6回戦でもう『チャンピオン』の称号を与えるGレジェンドさんは救いようのない考え違いをしていますね。

 女子総合格闘技も同じような間違いを過去に散々繰り返しています。そういう歴史をちゃんと見てください。特別扱いされ、特に強い相手と戦わなくてもチャンピオンベルトを持たされた某選手は、防衛戦でもハードな相手と当たらなくていい特別待遇で、まわりは大切に育てていたつもりなんでしょうけど、そのうち本人が「やめます」と言ってあっさり引退。

 人間てこういうものなんですよ。苦労しないで手に入れたものなんて、その程度のものなんです。

高野人母美選手
 ボクシングだってJBCさん公認化以降たくさんの女子王者を作って来ましたが、いまだに小会場でさえ集客もままならないマイナー状態。

 チヤホヤされて育った選手はなかなか本物には成りませんが、お客さんは本物を嗅ぎ分ける鼻を持っています。いくらメディアが寄ってたかって持ち上げても、実際に名選手の醸し出す独特の薫りが届かない限りは、前売り券なんて買ったりしません。

 本物を育てない限りは人気なんて出ないんです。この当たり前のことがどうして分からないのか?そろそろ誰かが気が付いてもいいでしょう?

 高野人母美選手はモデル兼ボクサーです。ただでさえ「話題作り」「でっちあげ」と思われる立場なのに、第2戦ではチヤホヤの極致のような扱い方をされていました。この日の彼女には、通常はタイトルマッチかよほどのビッグマッチのときにしか使われない後楽園ホール南側最上段のドアからのたっぷりと時間をかけての入場演出がされたのです。

高野人母美選手
 多分この扱いにいちばん驚いたのは彼女自身だったでしょう。試合は第1戦のときに見せたようなワイルドな伸びやかさが消え、失敗してはいけないという緊張感ばかりが目立つ凡戦。それでもジャッジは高野選手を支持し、リングアナは「勝利者インタビューです」とマイクを向けます。

 「いらねえよ!そんなもんいらねえんだよ!」と客席から声が響きました。アナウンサー氏は聞こえないふりでインタビューを続けましたが、高野選手にはしっかりとこの声は届いていました。かなり傷ついたようですが、これはモデルとボクサーの中間のイメージだった彼女がプロの洗礼を受けた瞬間だったのです。

 次の第3戦の高野選手にはこの時ほどの緊張はなく、第4戦は試合が終わってもしばらくは臨戦態勢が解けないほどの集中度で、インタビューもしどろもどろ。「すみません、放心状態で、なんと言ったらいいか… 」と謝っていましたが、これでいいと思います。大事なのはインタビューじゃなくて試合への集中。それはボクサーなら当然のことです。

 あのときのヤジのおかげで高野選手はまわりのチヤホヤを白紙にし、勘違いしないボクサーとして自分の道を踏み出しました。

 たった2戦目で強烈にヤジられた高野選手は普通に考えれば気の毒ですが、あそこまでお客さんの怒りを買ってしまったのは主催者さんの過度のチヤホヤが原因です。2戦目の新人をまるでメインのような扱いをしたらああなるのは当然の話。

 先日、キック系の3回戦で引き分けた新人のインタビューを、所属ジムが何か偉業でも成し遂げたかのような立派な動画にしてYouTubeにアップしてましたが、あれも駄目ですね。どういうつもりか知りませんが身びいきが過ぎます。あのような体質では、いい選手は生まれないだろうと思います。

 選手をチヤホヤする人間は、誰であろうと選手の敵。これはいつの時代でも変わらない真理。女子であるというだけでメディアは散々チヤホヤしてくれます。それにジムまで便乗するようではまともな選手は育ちません。

 あなたがもしも女子選手でマズイ試合のあとで「やめちまえ!」とヤジが飛んで来たなら選手扱いされている証拠。

 アイドル、かわいい、美人、モデル、女子アナ、タレント… そんなものを本気でヤジるお客さんはいないんですから。

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