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具体的には語らずイメージを刻み込む 印象操作の手法 天海ツナミ vs 山口直子の解説で混乱する表現を考える その2 ボクシングマガジン重田玲記者編

 Boxing

 プロスポーツには、試合をする選手がいて応援するお客がいて、試合中はその時間と空間を共有するわけですが、あとの感想まで共有出来るかどうかはまた違うようです。

 例えば、見に行ったわたしたちが「いい試合だったなあ」と思っても、選手のほうでは「よくなかった」と思っていることもあります。

天海ツナミ vs 山口直子

 選手は試合のプランを立て、それを実行出来るように練習を重ねます。客観的に見たらいい試合であっても、選手が練習どおりの動きが出来なかったり、プランを完璧にこなせなかったと思った場合、本人的には「よくなかった」となったりするわけです。

 こころざしが高くて、常に上を目指している選手ほど、そういう感想を持つようです。

 ボクシングマガジン9月号で、重田玲さんがツナミ選手を訪れて記事を書きました。記事の半分以上は重田さんの作文で、あとの半分がツナミ選手の言葉という構成になっていますが… 、こういう形式は記者さんがよほど相手方に立って発言内容を理解しないと、記者さんの意思のほうが強く働き、本人の意思とは違う形になることが多いんです。で、今回がまさにそんな感じ。

天海ツナミ vs 山口直子

 あの試合を、勝ってるかなとは思いました、と振り返りながらも、向上心の強いツナミ選手は反省点を口にします。攻めていくタイミングがつかめなかったです、その切り替えがまったくできなかった、と。

 この言葉を重田記者は「防御一辺倒になる弱点に結びついてしまった」「どうして防御一辺倒になってしまったのか」と論を進めるわけですが… 、ついていけないくらい強引な飛躍です。

 タイミングがつかめない、切り替えができないという話を「防御一辺倒になってしまった」と変換する作文はおかしいでしょう。

 重田記者は、防御一辺倒という言葉を二度も繰り返しますが、本当に試合を見たのでしょうか。

 あの試合をツナミ選手の防御一辺倒と書いたのはたぶん重田さん一人だけだと思いますし、これからもそんなふうに書く人はいないでしょう。

天海ツナミ vs 山口直子

 重田さんの記事は全体を通してツナミ選手に対するダメ出しのトーン。あの至高の激闘のただの一ヶ所もツナミ選手を誉めません。実に徹底した偏り方です。

 そして「 “負けに不思議な負けは無し” である」と上から目線の断言。

 負けは負け。負けを疑うな。ジャッジは常に正しい、とでも言いたいようです。

 「負けに不思議の負け無し」は昔の剣豪が残した名言。ジャッジもレフリーも誰もいない、勝っても負けてもすべてはおのれの責任、誰にもおのれを預けない、そういう世界の言葉。

 ジャッジやレフリーの公平さを信じ、彼らの手のひらに乗るしかないボクサーとはまるで無縁の話。こんなとこに引っ張り出す言葉ではありません。

 ファイティング原田会長だって、マニー・パッキャオ選手だって、不思議な負けに直面しました。

 いまだって、重田さんの隣のページで真藤ゴー選手が「判定には大いに不満です」と言ってるじゃありませんか。

 ボクシングには不思議な負けはいつでもあるのです。

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コメント

  1. 404 より:

    こんばんわ。判定を考えるシリーズ興味深いです。判定には一定の基準があるのに無視されるのが多いと思います。どうなっているのだろうと思う。マスコミの解説もああ言えばこう言うみたいで要領を得ない。しっかり基準どおりの判定をしてほしい。

  2. queens of the ring より:

    そうですね。判定基準があって無いような運営がされている現状と、メディアがそれをワケの分からない言い方で援護するパターンは、もうこれ以上続くべきでないとおもってます。
    9月にも世界タイトルマッチがあって、今回は非常にいいカードなんですが、そこでもツナミvs山口戦みたいな意味不明な判定をされたら日本のボクシングは終了かな、と。
    そんな危機意識でこの記事は書いています。
    ライターさんたちに個人的にどうのこうのというのは全然ありませんが、いままでのようなジャッジ擁護はもう通じないことを知ってほしいです。
    このシリーズはもうちょっと続きます。

  3. より:

    「負けに不思議の負けなし」のフレーズは楽天の野村元監督も多用してましたね。
    野球も誤審の影響を受けやすいスポーツですが、
    そこで使われているということは、必ずしも剣豪の世界だけではない一定の普遍性はあるのでしょう。

    本来の意味からいえば、そもそも第三者からの評価で使われる言葉ではないですけどね。

  4. queens of the ring より:

    るさんコメントありがとうございます。
    このフレーズがここまで市民権を得ているのは、ご指摘のとおりの普遍性があるのでしょう。

    でも、野村監督は誤審には徹底的に抗議してましたよね。

    >本来の意味からいえば、そもそも第三者からの評価で使われる言葉ではないですけどね。

    まさにおっしゃるとおりです。
    これは当事者が内省するための言葉であって部外者から押し付けられるものではないですよね。
    この言葉を評論家やライターなどが使うこと自体が誤用だと思います。

  5. MOJITO7BAR より:

    まさにそのとおり。

    重田玲が記者としての資質に欠けるからこうなる。

    だいたいろくに記者経験も積んでない重田が上から目線なのがおかしい。女子ボクシングなんて公認後から見たような人間。調子に乗って他のベテラン記者みたいな立場で偉そうに書く。だからボクシングマガジンは買わない。

    少し前なんて、取材する前に選手のブログを見るとか見ないとか対談で語っていて、まったく読者置いてきぼり。こういう人間をテレビ解説でも使うフジテレビのダイヤモンドグローブもダメです。

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