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RENAは神村エリカにこうして勝った 選手にはそれぞれの個性と強さがある キックボクシング女子

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 激闘と激動で明け暮れた2011年のシュートボクシング/キックボクシング女子。その中心にいたのは神村エリカ高橋藍RENAの3選手でした。3人の誰が最強なのか?このテーマに全国のファンは釘付けになり、ひとつひとつの試合が大きな注目を集めました。

 今年、最初から快調に飛ばしていたのは高橋藍選手、そして神村エリカ選手です。高橋選手は2月にタイのサーサー・ソー・アリー選手に2ラウンドTKO勝ち、4月には藤野恵実選手に1ラウンドTKO勝ちという強さを発揮し、神村エリカ選手も4月にタワン・ポー・プラムック選手を1ラウンドKOと快調な滑り出し。

 一方、RENA選手は昨年の負傷の影響でその間の数ヶ月はまったく試合の無い状況が続いていました。そして4月下旬、突然決まった神村エリカ選手との(勝敗無しの)エキシビションマッチでRENA選手は神村選手にダウンを喫し、それまでの「RENAが女子最強」の評価に疑問符がつけられるようになりました。

高橋藍vsRENA
 さらに6月、高橋藍選手とのタイトルマッチでRENA選手は大差の判定負け。去年の対戦では勝っていた高橋藍選手に今年はRENA選手が敗れたことの衝撃は大きく、公然と「RENA選手は終わった」「実は強くなかった」と言い始める人が現れます。

 そのころ神村選手は世界の軽量級のトップ選手であるシルビア・ラノッテ選手に苦戦の末にTKOという金星をあげ「神村エリカが世界最強」という声が上がるほどに評価が急上昇。

 そこで持ち上がったのが高橋藍選手と神村エリカ選手の一騎打ちで女子最強を決めようというビッグマッチ。この試合に対するファンの期待は大きく、RENA選手は完全に話題からはずれてしまった形に… 。激戦が予想されたこのカードですが、なんと高橋選手が練習中の大きなケガで年内試合復帰が不可能に。そこで代替カードとして決定したのが11月23日の神村エリカ対RENAでした。

 今年の神村選手の戦績はそれまで7戦して全勝、うちKOが6個という凄まじさ。対するRENA選手は3戦して勝ちはわずかにひとつ。さらにエキシで神村選手に実質的敗北を喫していたこともあって、ほとんどの人がこの試合を神村エリカ選手の絶対有利と予想しました。… しかし、いざフタを開けてみると3-0という大差の判定で勝利したのはRENA選手だったのです。

 絶対的に不利と言われたRENA選手はどうやって神村選手に勝ったのでしょう?精神論はさておいて格闘技の本質であるその戦術をぞいてみましょう。

 その前に、高橋藍、神村エリカ、RENAの3選手のファイトスタイルについてのおさらいを少し。

高橋藍vs藤野恵実
 高橋選手は長身から繰り出される左右のパンチと打点の高いヒザ蹴りが武器ですが、その戦い方は基本的には守備的なカウンターアタック。攻めて来る敵に鋭い左ストレートを浴びせて動きを止め、そこに強烈なヒザを刺して試合を決めるのが彼女の必殺パターン。

神村エリカvsポラーナ
 神村エリカ選手は超攻撃型の電撃戦スタイル。常に前へ前へと出ながら左ミドルキックで攻撃の起点を作り、左フックでダウンを奪うKOパターンはあまりにも有名。

 RENA選手も神村選手ほどではないけれども攻撃系のイケイケ戦法。常に自分から攻撃を仕掛けますが、神村選手と違うのは前に出るばかりではなく前後左右に動いて試合を組み立てる動きがあること。

 6月の対RENA戦で高橋選手が警戒したのはこのRENA選手の試合を組み立てる能力だったと思います。高橋選手が得意のカウンター殺法を炸裂させるためにはRENA選手が前進してくることが必要条件。もしも、RENA選手が距離を取って慎重に構えたら、高橋選手はやりにくかったことでしょう。

 しかし、RENA選手はひたすら前進し、高橋選手の狙いどおりにカウンターの左ストレートを受けてダメージを重ねていって散りました。試合前の高橋選手の過激な「先制口撃」はRENA選手の冷静さを失わせて攻撃一辺倒にさせる作戦だったのかもしれません。

 高橋選手と神村選手の対戦が実現していたなら、おそらく高橋選手はカウンターを狙ったでしょう。神村選手は必ず前進ファイトをしますから、挑発をする必要も無かったでしょう。その結果がどうなったかは分かりませんが、試合のパターンとしてはカウンター高橋 vs アグレッシブ神村となったと思われます。

 さて、RENA選手対神村エリカ選手のお話です。結論から言って、この試合でRENA選手はカウンター戦法を使いませんでした。逆に前へ前へと出る姿勢をつらぬきました。RENA選手の神村選手攻略法は「徹底した先制と前進」だったのです。

石岡沙織vs高橋藍
 格闘技で使われるパンチにはいろいろな種類があります。そして場面によっていろんなダウンシーンがあります。かつて石岡沙織選手が高橋藍選手からダウンを奪ったのはその場でのコンビネーションパンチでした。総合格闘技で渡辺久江選手が15(いちご)選手を倒したのはバックステップしながらのパンチでした。しかし、神村エリカ選手のKOパンチが炸裂するのは必ず神村選手が前進しているときなのです。

RENA vs 神村エリカ
 ここに目を付けたRENA選手は神村選手が前進して来る前に自分が攻撃して前進させない、あるいは自分から前進して神村選手が前に出てくるスペースを与えない作戦に出ました。ものすごい集中力で神村選手の動きを読み、彼女が前に出る一瞬前にその動きを全部潰す戦法です。

RENA vs 神村エリカ
 また、それだけではなくディフェンスにもいろんな工夫がありました。神村選手の得意パターンのひとつである、左ミドルを受けさせて相手のガードが中段に下がった時に顔面に左フックを叩き込む、というコンビネーションも、ガードは下げないままでもう一方の腕で蹴り足をすくい取るような防御をしています。

 神村選手が左フックを打ちそうなタイミングでは、あえて自分から神村選手の左のグローブの直前に出て行ってパンチを打ちにくくする積極的な防御もしています。「前に逃げる」テクニックです。

 攻撃では得意の高速前蹴りを自由自在に駆使、さらに高橋藍選手ばりの左ストレートも披露。その他いろいろと攻守にわたって面白いことを見せてくれました。RENA選手はここ数ヶ月で飛躍的に戦い方の幅を広げることに成功していたのです。次々といろいろなスキルとアイディアを身につけていたRENA選手。たぶん彼女は毎日の練習が楽しかったでしょう。

RENA vs 神村エリカ
 格闘技の最高の形はKO決着。それはまったく疑いの無いことです。しかし、それがすべてというわけではありません。KO率が高い選手が必ずしも最高最強であるとは言えないのが格闘技の面白さ、奥の深さ。そのことに気が付いた時に、ひとはその意味に感動し、二度と離れられなくなってしまうのだと思います。

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qbar

コメント

  1. ニワ より:

    んー、格闘技見るのは本当におもしろい。

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