Boxing
2011年12月16日(金)アルゼンチン メンドーサ
WBCライト級タイトルマッチ戦 10回戦
王者 エリカ・ファリアス(アルゼンチン)白と黒のコスチューム
VS
挑戦者 メリッサ・ヘルナンデス(プエルトリコ)白と青のコスチューム
今年の8月に正規/暫定統一戦に勝利してWBCライト級正規王者となったエリカ・ファリアス選手が同王座の防衛戦をおこないました。挑戦者は圧倒的なボクシング技術と高いプロ意識、そして見事な姉御っぷりで女子ボクシング界の顔役と言われるメリッサ・ヘルナンデス選手。
この大物を対戦相手に迎えた王者ファリアス選手は、いつものゴリ押しファイトを完全に封じられ、手も足も出ない状態で10ラウンドを終えましたが、結果は3-0の大差でファリアス選手が勝利してタイトル防衛。
この対戦でヘルナンデス選手がずっと格上のボクシングを見せていたことは誰の目にも明らかです。
でも、勝負論的には、アウェイのヘルナンデス選手はもう少し決定打を叩き込んでいるべきだったかもしれません。ボクシングは、すぐれた競技者のほうが必ずしも勝ちを告げられるとは限らないホームタウンイベントです。それがボクシングというものの「いつもの光景」なのですから。
この試合で、わたしたちは勝ち負けは別にしてヘルナンデス選手の高いレベルのボクシングを楽しむことは出来ました。しかし、わたしたちは「だからいいじゃないか」とは言うことが出来ません。ボクシングというスポーツを愛し、誇りを持って戦っているヘルナンデス選手にかける言葉がありません。
このようなアンフェアな空気の世界戦が珍しくないボクシングに比べて、今年から来年にかけて現在進行形でおこなわれているムエタイのビッグイベント、『ムエタイプレミアリーグ』ではこれまでのところホームの選手の判定負けも当然という公平な運営がされているようです。
日本国内を見ても近年はキック、シュートボクシング、ムエタイのほうが、ボクシングよりもずっと公平な判定、合理的な運営をしている印象があります。ボクシングが悪くなっているというよりも、ボクシングが時代に置いていかれているというのが近いかもしれません。
キング・オブ・スポーツと呼ばれたかつての地位をほかのスポーツにおびやかされているボクシングが、再び力を持つためにまず必要なのは「勝ちは勝ち、負けは負けとして見せる」ことの意味を理解するビジネスセンスなのではないでしょうか。プロスポーツとは勝てば人気が出るという単純なものではないのです。
フェアプレイうんぬんの正義論、感情論とは別に、ホームの選手が負けても、なお、それをエンターテイメントとして提出出来るフトコロの深さと、そこでアピールが途切れない粘り強いプロモーションの力が無ければ現代の人気スポーツは成り立ちません。
浅田真央選手はいくつもの試練を乗り越えて出場したオリンピックで金メダルを取れなくても人気を失いませんでした。その一方で、連戦連勝、世界の王座を何度も何度も守り続けてもまったく人気が出ない選手もいます。スポーツは勝ち負けだけではないのです。
QRはより高いレベルの真剣勝負にこだわる選手を応援したいです。メリッサ・ヘルナンデス選手のような選手に勝ってほしいのは山々ですが、負けても応援する気持ちは変わりません。それは基本的にすべての選手に対して同じです。勝ち負けはものすごく大事なものですが、勝ったからといって持ち上げ、負けたからといって落とすようなことはしません。結果にだけ左右されたりはしませんよ。
WBCライト級タイトルマッチ戦 10回戦
○王者 エリカ・ファリアス(アルゼンチン)
判定 3-0
×挑戦者 メリッサ・ヘルナンデス(プエルトリコ)
(97-93、97-93、96-94)
この結果、ふたりの戦績は以下のようになります。
エリカ・ファリアス(アルゼンチン)12戦12勝6KO
メリッサ・ヘルナンデス(プエルトリコ)22戦16勝3敗3分6KO
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