観客席視点からの立ち技系女子格闘技
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女子ボクシングを成功させる

 Boxing

 JBC(日本ボクシングコミッション)さんが女性にプロボクシングの権利を認め、JBC体制で女子マッチがおこなわれるようになってからすでにある程度の時間が過ぎました。

 当初は「さあ、女子ボクシングブームが来るぞ!」と盛り上がる人たちもいたようですが、そう都合よくはいきませんでしたね。

過去の例から学ぶ

 女子プロボクシングを「新しい」とか「始まったばかり」と言う人がいますが、それは間違いです。実際には女子プロボクシングは、国内、海外で、すでに10年、20年という歴史があります。

 その中には失敗例もありますし、成功例もあります。その中から何かを学べれば日本の女子ボクシングはうまくいくでしょうし、何も学ばないならうまくいかないでしょう。

アルゼンチンのボクシング中継の予告動画。主役は女子王者マルセラ・アクーニャ選手。

 女子プロボクシングが最も成功している国としてはドイツがあります。アルゼンチン、メキシコも活気がありますし、一時の勢いは失ったとはいえアメリカも女子ボクシングが根付いている国だと言えます。

 これらの国の例から言える成功の大原則は、
1.女子と男子の試合を分けない。女子も男子と同じ興行で試合をさせる。
2.真剣勝負をさせる。見せ物的に扱わない。
3.女子ボクシングの流れに従う。
という3点です。

1.女子と男子の試合を分けない。女子も男子と同じ興行で試合をさせる。

 1.については、一般のボクシングファンに試合を見てもらわなければボクシングとしての評価も支持も得られないので当然のことです。世界を見ても女子だけ大会というのはまれで、その路線で成功した国もありません。

 日本では、JBC認可以前に女子だけのボクシング大会のシリーズが東京や岡山でありましたが、いずれも一般の支持は得られませんでした。「女子だけ」と特化することが、逆に言えば一般のボクシングファンへの扉を閉ざすことであったのでファン層の広がりが生まれなかったのです。

 当時の日本で、女子の試合をしようとすれば、女子だけ大会になるしか選択肢がなかったので仕方のないことでした。その「仕方ないこと」をJBC体制になってからも続ける意味はないのです。

 JBC体制での女子ボクシングの最初の試合は、ご存知のとおりGレジェンドという名前の女子だけ大会として2008年におこなわれました。このときは「最初のお祭りみたいなものだからまあいいや」と思いましたが、翌年にGレジェンド第2回大会がおこなわれた時はあきれました。

 なんで女子だけ大会をするのでしょうか? 過去の失敗例を知らないのでしょうか? 女子だけにして何かメリットはあるのでしょうか?

 結果は、前回満員だった後楽園ホールが空席ばかりの閑古鳥。客席は数百程度しか埋まりませんでした。

 内容的には前回大会を上回ったものの、見に来た人は半分以下。もちろんテレビ放送もDVD発売も無し。いくらいい大会でも、人に知られなければなんにもなりません。こんな閉じた世界から何かが発展することはありません。

 この大会には6試合12人の選手が参加しましたが、深刻な選手不足の日本で一度にこれだけの選手が試合をしてしまうと、その前後には女子ボクシングのカードを組むことが不可能になり、何週間ものあいだ女子ボクシングの試合がほとんどおこなわれないというマイナスの副作用もありました。

 Gレジェンド第2回大会には数百人のお客さんしか来ませんでしたが、このときの6試合をひとつづつバラで通常の後楽園の試合に組んでいれば、見たお客さんの数は何倍にもなったはずです。男子のなかに混ぜられても十分に光を放つような好カードが多かったのでそのほうが良かったのですが、もったいないことをしました。

 日本では女子選手があまるような状態にでもならない限りは女子だけ大会は開く必要はないのです。もうGレジェンドはいりません。

2.真剣勝負をさせる。見せ物的に扱わない。

 2.についてはプロスポーツとしては当たり前のことで、わざわざ言うことでもないのですが、ボクシングの世界では分かってない人が多いようですね。最近、日本のボクシング界全般が権威を失っているのはそれが理由なのに。

 日本では女子でも(JBC以前も以降も)スポーツとしての公正さに欠ける試合が(特に世界戦で)見られるのがボクシングですが、具体的には以前も書きましたし、振り返るのも気分が悪いので略します。
参考記事

3.女子ボクシングの流れに従う。

 女子プロボクシングには男子の慣例とは違う部分がいろいろあります。

 世界的に見ても女子ボクサーは男子ボクサーに比べて圧倒的に人数が足りません。そのために、転級が非常にたくさんおこなわれています。転級とは自分が所属する階級を変えることで、男子では一人のボクサーが自分の階級を何度も変えることはなかなか無いことですが、女子の場合は珍しいことではありません。

 女子はもともと選手が足りないので、対戦者を選ぶ時にひとつの階級にこだわっていてはなかなか試合機会に恵まれません。そのために、二、三の階級を行ったり来たりすることがふつうです。

 これはチャンピオンであっても同じで、ある階級のチャンピオンがその王座を保持したまま別の階級の王者に挑戦するようなこともおこなわれています。

 同じ理由で、世界の女子ボクサーは自分が戦う相手がどの団体に属しているかということは選り好みしません。あの団体のタイトルマッチはしない、この団体の選手とだけ戦う、などということを言っていると相手が見つからないからです。

 *日本のボクシング界ではいま、JBCさんが認定するWBCとWBAの王座だけしか認めないという建前になっていますが、それは世界のボクシング界の現状とは大きくかけ離れています。世界にはいくつもボクシング団体があり、その中で特定の二団体に限定して試合をしようとするのは世界の流れにさからうことなのです。*2013年からWBOとIBFの王座もJBCさんが認めるようになりました。この二団体は男子では大メジャーですが、女子ではまだまだの段階にあります。

 今後、日本人女子プロボクサーが世界のリングで活躍するためには、WIBF、WIBA、IFBA、WBOなどのチャンピオンと戦っていく必要があり、現状の「WBCとWBAしか認めない」路線は非現実的です。

 世界の各国が認めているこれらの団体を否定して、今後も二団体限定路線を守ろうとするなら、欧米だけでなくタイや韓国の選手とも付き合いにくくなっていくことでしょう。日本の女子ボクシング界のガラパゴス化を避けるために、一日も早い開国をお願いします。

緊急の課題 国内での規制緩和

 世界の女子ボクシングは、他競技との掛け持ち選手や、他競技出身の人材に支えられて成り立っています。

 東洋太平洋ランカーのアンジー・パー選手やミッシェル・プレストン選手はキック/ムエタイの王者ですし、タイから来るボクサーのほとんどもムエタイファイターですね。世界チャンピオンのオリビア・ゲルーラ選手、アナ・フラトン選手、マルセラ・アクーニャ選手、ホリー・ホルム選手などはもともとキックボクシング、空手、テコンドーの出身ですし、チベール・ホールバック選手やエレナ・リード選手はボクシングと総合格闘技を掛け持ちしています

 このようにボクシングと他競技の共生は当たり前のことで、日本でもJBC体制以前は現役のキックボクサーや格闘家がたくさん参戦してリングを盛り上げていました。

 それがJBC体制になってから他競技との掛け持ち参戦は一切認められないようになり、多くの女子格闘家がボクシングのリングから去りました。

 かつて、百数十人いたと思われる女子プロボクサーは、JBC体制以降は80人程度になっています。しかもそれはライセンスを持っている人の総数で、実際に試合をしている人はさらに少なく、すでに現状ではカードを組むことすら難航し、多くの選手が次の試合も決定しないまま不安な日々を送っています。

 ライセンスを持っていても試合機会の無い人、試合をしない人、年齢制限でもうすぐライセンスを失う人、年齢制限ですでにライセンスを失った人、事情で引退した人などが、新規にデビューする選手よりも上回っているのが現実です。つまり、現役で活動中のボクサーがJBC体制以降どんどん減少しています。

 このままでは日本の女子プロボクシングは存続出来ません。

 存続のために安全基準にかかわる部分をゆるめろとは言いません。しかし、ボクサーとしての適性に問題が無く、ボクサーを志す人には、他競技で活躍中の選手であってもボクサーライセンスを認めてほしいと思います。

 また、年齢の高いボクサーが試合で負けたとしても、すぐに引退勧告を出すことは見合わせてください。彼女達の熱意と経験が日本の女子ボクシング界には必要なのです。

 女子プロボクサーに試合機会を与えてください。よろしくお願いします。

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コメント

  1. 110 より:

    キックボクサーでボクシングをやりたいコはけっこういるよ!

  2.   より:

    どうして他競技の選手がボクシングをやってはだめなんだろう

  3.   より:

    いわゆる異種格闘技戦として利用されるのを嫌っているのが理由です<どうして他競技の選手がボクシングをやってはだめなんだろう

    JBCさんは女子ボクシングを潰したいとしか思えない。

  4. 110 より:

    異種格闘技?キック対ボクシングとかって言われてボクシングが負けたらまずいとかですか。
    負けても勝つまでやればいいのに。勝負の勝ち負けは恥ずかしいことではないよ。勝負しないのが恥ずかしいよ。

  5. KOboy より:

    掛け持ち禁止なんて規定のためにボクサーが少ないのか。

  6. 猫好き より:

    正論に大賛成!マイナーな女子のボクシングを一層縮小しているのがJBCと云う組織なのか!納得した。頭の硬いJBCのえらいさんたちには早期に退場願いたい!女子ボクシング界と他の女子格闘技との壁を撤去して、その他の規制も大幅に緩和し、風通しを良くすることが女子格闘界を盛り上げる唯一の道だと考えます。そうすれば強い選手の数が増え、女子ボクングの人気も高まるでしょう。貴論に小生、全く同感。正論を唱える貴サイトには横やりも入るかもしれませんが、今後も頑張って下さい!日々頑張っている選手たちの為にも!

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